- 国税庁が提供する「年末調整計算シート」は、従業員の給与や控除情報を入力して税額を自動計算するExcelファイルです。
- このツールから直接 源泉徴収票が作成できるわけではないので、計算結果を元に源泉徴収票を作成します。
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マクロ付きのExcelファイルですが、マクロを無効化しても計算は関数だけでできます。
マクロは入力欄の「リセット」機能として提供されています。
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「年調ソフト」は、控除申告書を作るためのもので、全然別物なんだね。
1. 「年末調整計算シート.xlsm」と源泉徴収票
「年末調整計算シート」は、Excelで作成された計算補助ツールで、項目を入力すると「年末調整金額」と「源泉徴収票の各金額」を自動的に計算してくれます。
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「年末調整」とか「源泉徴収」ってどういう仕組みなの?
ざっくり全体の流れを説明すると、会社の従業員の給与は、毎月 所得税の分などが引かれて支払われています。
これが「源泉徴収」。
12月には、いったん徴収してある所得税を正しい税額に合わせる必要があります。
というのも、給与所得から保険料などの控除できる分を反映すると、取られすぎていた分が還付されることも多いからです。
これが「年末調整」。
その計算のため、従業員は前もって10月〜11月ごろに「控除申告書」として何枚かの書類を出すように言われるはずです。
「年末調整」が済むと、会社を通して納付する所得税額が決まり、1月には「源泉徴収票」が作られます。
これは、税務署や地方公共団体に送って、従業員の所得が記録されます。
住民税などの計算にも使われます。
さらに、従業員が給与以外の所得があって「確定申告」をするような場合には、この源泉徴収票は給与所得の証明として使われます。
1-1. 源泉徴収簿と年末調整計算シート
年末調整・源泉徴収票を作ろうと思うと、以下のような書類やツールがあります。
- 源泉徴収票
- 源泉徴収簿
- 年末調整計算シート(国税庁提供)
- 年末調整用ソフト(市販)
一番大事なのは、「源泉徴収票」。
かんたんに言えば、従業員の一年間の給与と預かっている所得税の金額を証明する書類で、法律によって毎年 1月には従業員に交付する義務が定められています。
本人が確定申告などで使うだけでなく、税務署・従業員の居住するそれぞれの市町村にも提出しなければなりません。
源泉徴収票を計算するための記録が「源泉徴収簿」。
「源泉徴収票」の算定根拠として重要な記録で見本は国税庁から公開されています。
しかし、法律で作成・提出が決まっているわけではありません。
1-2. 年末調整計算シート
国税庁からは「源泉徴収簿」によく似たExcelファイルも公開されています。
それが「年末調整計算シート」。
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国税庁が提供している年末調整計算シートには、従業員の給与総額や扶養親族の情報を入力するだけで、年末調整の税額を計算できます。
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これまでは、控除申告書を見ながら電卓で計算していたのですが、Excelだと賃金台帳のデータを使って計算しやすいです。
2. 源泉徴収票を提出するには?
しかし、このシートは計算を補助するためのツールで、源泉徴収票を作成する機能はありません。
計算結果をもとに、別途 源泉徴収票を作成する必要があります。
源泉徴収票は、このシートで計算された結果を基に、正式な様式で作成する必要があります。
国税庁で公開されているものはPDFです。
Excelで入力したい場合は、外部で公開されているファイルを使う必要があります(非公式なので使用前には要確認)。
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2-1. 年末調整計算シートとe-Tax
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e-Taxソフトに年末調整の計算機能はなかった?
国税庁が提供するe-Taxソフトには、法定調書の作成とオンライン提出に特化しています。
年末調整の税額計算機能は搭載されていません。
e-Taxでは、CSV形式で法定調書をまとめて提出できる機能があります。
各従業員の源泉徴収票の項目を「標準フォーム(web_375.xlsx, e-tax.nta.go.jp)」に合わせて入力して用意します。
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「年末調整計算シート」をそのまま送るわけではないんだね。
2-2. 【補足】「年調ソフト」とは?
さらに、国税庁からは「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(通称:年調ソフト)」も提供されています。
ただし、これは「控除申告書」の作成に特化したソフトで、従業員が自分で控除申告書を作成して、CSV形式で出力するものです。
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年末調整の前段階で、源泉徴収票そのものを作るわけではありません。
業務用パソコンにインストールして共用することが想定されていて、それぞれの従業員がパスワードを登録して、個人のデータ入力していきます。
結果として作成されたデータを会社に提出するのです。
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一度、年調ソフトを試したところ、個人情報を扱うソフトなので、かえって使い方を説明するのが大変でした。
個人的な感想ですが、控除申告書は書類を書いて提出してもらった方がわかりやすい気もします。
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控除の項目が多い正社員が多い企業だと、手書きは手間がかかるんだろうね。
医療費などがマイナポータルと連携できるのがデジタルのメリットだし……
ちなみに、国税庁の「年末調整計算シート」以外にも、計算から書類作成までを一括して処理するための年末調整用ソフトが市販されてもいます。
これらは、年末調整の計算だけでなく、源泉徴収票の作成、給与支払報告書の作成と電子提出、法定調書の作成などの機能が統合されています。
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小規模事業者は計算シートで十分かもしれませんが、従業員が多い場合は市販ソフトなどを導入することになります。
2-3. 年末調整計算シートのマクロは必要?
年末調整計算シートは、マクロ付きのExcelファイル。
編集には、Microsoft Excelが必要です。
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マクロの実行には、「トラストセンターの設定」で許可する必要があります。
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なんとなくインターネットでダウンロードしたマクロ付きのファイルってセキュリティ的に心配な気もするよね。
年末調整計算シート(kesansheet_r06.xlsm
)の注意書きには、「拡張子(.xlsm)は変更してはいけない」とあります。
しかし、含まれているマクロは、「リセット」だけ。
マクロを無効のまま利用したり削除したりしても、関数による計算結果には問題なさそうです。
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Sub リセット()
'
' リセット Macro
'
'
Range(
"P3:V4,E3:M3,E4:M4,P3:V4,I7:J7,I8:J8,I9:J9,I10:J10,I11:J11,V7:W7,V8:W8,V9:W9,V10:W10,V11:W11,T14:AA14,T15:AA15,M14:R14,M15:R15,T18:Z18,V22:Y22,V24:Y24,V26:Y26,V28:Y28,M20:R20,M21:R21,M22:R22,M23:R23,M24:R24,M25:R25,M27:R27"
).Select
Range("M27").Activate
ActiveWindow.SmallScroll Down:=12
Union(Range(
"T35:AA35,T37:AA37,T39:AA39,P3:V4,E3:M3,E4:M4,P3:V4,I7:J7,I8:J8,I9:J9,I10:J10,I11:J11,V7:W7,V8:W8,V9:W9,V10:W10,V11:W11,T14:AA14,T15:AA15,M14:R14,M15:R15,T18:Z18,V22:Y22,V24:Y24,V26:Y26,V28:Y28,M20:R20,M21:R21,M22:R22,M23:R23,M24:R24,M25:R25"
), Range("M27:R27,T30:AA30,T34:AA34")).Select
Range("T39").Activate
Selection.ClearContents
ActiveWindow.SmallScroll Down:=-15
Range("E3:M3").Select
End Sub


拡張子を .xlsx に変更しても計算はできました。
データ入力フォームをクリアするために用意されたマクロなので、ファイルをコピーして各従業員ごとに使えば、マクロなしでも問題なさそうです。
3. どこまでデジタル化する?
会社の規模や状況に応じて、以下の3つの方法から選ぶことができます。
最も基本的な方法は、手計算と国税庁の無料ツールなどを組み合わせる方法です。
源泉徴収税額表で毎月の税額を計算し、国税庁の年末調整計算シートを使用します。

費用はかかりませんが、手作業が多くなります。
ただし、その分 何をやっているのかは把握しやすいです。
会社の規模が大きくなってくると、市販の年末調整ソフトを導入する方法も増えてきます。
年末調整計算の自動化、源泉徴収票の印刷、給与支払報告書の作成、電子申告への対応などの機能があります。
さらに大きくなると、人事・給与システムと連携する方法です。
ふだんの給与計算から源泉徴収までが自動的に連携し、従業員データを一元管理できます。
マイナンバーや電子申告にも完全に対応しています。

会社の規模や状況に応じて、最適なアプローチを選択することが重要です。
初期は手計算やExcelから始めて、必要に応じてステップアップしていくのも一つの方法です。
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