LINEが普及し、プラメが普及しなかった理由を考える

LINEが普及し、プラメが普及しなかった理由を考える
  • 「LINE」は、スマートフォンの普及と呼応して、従来のメールやSMSにはない独自性でユーザー層を広げました。
  • 初期のユーザーが周りの人に「利用を促す」構造が発生し、強固なネットワーク効果が生まれたのです。
  • 一方、「+メッセージ」は後発でLINEの優れた機能を取り入れましたが、SMSにも対応したことがかえって普及を妨げてしまいました。
  • SMSからRCSにスムーズに導入できる仕組みですが、すでにSMSの利用者層が少なくなっていたからです。
LINEが普及し、プラメが普及しなかった理由を考える

アプリの普及には、利便性と導入圧力のバランスが必要なんだね。

LINEが普及し、プラメが普及しなかった理由を考える

とはいえ、LINEはプライバシー保護や企業統治の点でたびたび問題視されているので、「国産」である+メッセージを再評価する動きもあるかもしれません。

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1. LINEとプラメ(+メッセージ)

LINE+メッセージ
インターネット回線を利用したチャット形式の独自のメッセージアプリ従来のSMSとそれを拡張したRCSを利用できるメッセージアプリ

「LINE」と「+メッセージ(プラメ)」は、メッセージアプリの代表格です。

1-1. LINEの普及

LINEは2011年にサービスを開始し、スマートフォンが普及していくのに合わせて、いっきに広がりました。

参照:トークだけではないLINEの画面切り替えの話 【 LINEアプリのホーム画面】
参照:トークだけではないLINEの画面切り替えの話 【 LINEアプリのホーム画面】

従来の電子メールやSMSの不満点である応答速度や料金・文字数などを、スマートフォンの仕組みによって置き換えることができました。

1-2. +メッセージ(プラメ)の登場

一方、+メッセージは2018年にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手携帯キャリア3社が共同で立ち上げたサービス。

参照:「+メッセージ」アプリの「すべて同意」と「SMSのみ」の違いは?【RCS】
参照:「+メッセージ」アプリの「すべて同意」と「SMSのみ」の違いは?【RCS】

すでにLINEがメッセージアプリとして優勢な中、後発の+メッセージは、LINEの優れた機能を取り入れ、さらに利便性を高めることを目指しました。
ところが、結果的にLINEを置き換えるには至っていません。

2. LINEが普及した理由は?先行者利益とネットワーク効果

LINEの普及した理由
  • 電話やSMSのような機能を無料で利用できた
  • チャット形式ですぐに応答がある
  • スタンプやグループトークなどがある

LINEは、「SMS」を置き換えるアプリとして登場しました。
主な競合は、電子メールとSMSでした。

LINEは、2011年にインターネット回線を利用した通信手段として注目を集めました。
同年にあった東日本大震災後では、携帯電話のサービスが不安定になったことも影響しています。

LINEは、iPhoneでもAndroidでも使えるメッセージアプリとして、早期にユーザーを獲得しました。
友人や家族とのコミュニケーションに欠かせない存在となることで、新規ユーザーが次々と引き寄せられていきました。

LINEが普及した理由は?先行者利益とネットワーク効果

LINEは、ほかのメッセージアプリに先行して大きなユーザー基盤を持つことができ、「コミュニケーション インフラ」としての役割を果たすことになりました。

2-1. SMSに対応しないからこその導入圧力

LINEの導入圧力

「連絡にはLINEを使ってほしい」
という口コミで普及した

LINEを使う友だちとやり取りするには、LINEアプリのインストールと登録が「必須」でした。
LINEは、SMSに対応していないからです。
これは、+メッセージやiPhoneのiMessageなどとの大きな違いです。

しかし、この「面倒くささ」が逆に、ユーザーのアプリ普及を後押しする効果をもたらしました。

2-2. 「LINEならでは」の優位性が明確だった

多くのユーザーがLINEアプリのインストールという「ハードル」を乗り越えたのは、友だちによる口コミです。

LINEにとっての競合は、従来の電子メールやSMSでした。
LINE利用者には、それらではなくLINEアプリを使いたい理由がありました。

  • メッセージの応答が速く既読も確認できる
  • スタンプや写真を手軽に送れる
  • グループで一同にやり取りできる
  • iPhoneでもAndroidスマートフォンでも共通して使える

LINEがアプリのインストールを必須としたことで、ユーザーは友人とのコミュニケーションのために、LINEの導入を迫られることになりました。
この導入圧力が、LINEの普及を加速させる原動力となったのです。

3. +メッセージはSMSを拡張したRCSに対応

「+メッセージ」は、大手通信キャリア3社が主導したサービスです。
LINEの登場によって減ったSMSの利用者を取り戻すために開発されました。

そのため、+メッセージは、「SMSを置き換える」のではなく、「SMSを拡張する」ことを目指していました。

そのため、+メッセージはSMSと「リッチメッセージ(RCS)」の両方に対応していました。
従来のSMSと「LINEのような」高機能のメッセージ機能を、あまり違いを意識せずに利用できるのが特徴です。

3-1. SMSとRCSの両方に対応したことが仇になる

しかし、利便性を高める設計が、かえって普及には「仇」となってしまいました。

+メッセージのユーザーは、友だちが「+メッセージ」を利用していなくても、SMSでやり取りができます。
この「ハードルの低さ」が、かえって普及を妨げる結果を生んでしまいました。
ユーザーに+メッセージの導入を促す圧力が働きにくかったのです。

しかも、後発の+メッセージが登場したころには、すでにLINEのネットワークは確立されていました。
多くのユーザーが日常的なメッセージのやり取りを、SMSではなくLINEに移行していたのです。

+メッセージは、LINEとの機能面での明確な違いを打ち出せませんでした。
まだLINEを利用していなかった人が、+メッセージではじめてRCSに触れることになりましたが、
すでにLINEを利用していたユーザーはわざわざ+メッセージに乗り換える理由が乏しかったのです(スイッチングコスト)。

また、SMSとRCSで微妙に機能に違いがあるのは、+メッセージの「ややこしさ」にもなりました。

後から、メッセージアプリとして使ってもらうのは困難な状況でした。

SMSとRCSの両方に対応したことが仇になる

メッセージアプリの普及には、適度な「ハードル」によるユーザーの導入圧力が重要だと言えるでしょう。

3-2. 当初は大手キャリア限定だった

SIMフリーなのか?
  • 当初は大手キャリアの利用者に限定していたので、
  • いずれはMVNOに乗り換えることを検討しているユーザーには
  • サービスを継続して利用できるか不安にさせてしまった

キャリア主導の問題点は、もう一つあります。
各キャリアがユーザーを自社サービスに囲い込もうとし、当初はMVNOは +メッセージを使えなくしたことです。

しかし、ユーザーには特定のキャリアに依存することへの抵抗感があります。
将来的に料金の安い通信会社を変更する可能性を残すには、+メッセージをメインの手段にするのは障害になるのです。

また、3社間の意思決定や調整の難しさによって、サービスが「薄味」になってしまったことも要因になっています。
先行するLINEの機能は網羅することはできているのですが、独自の「+メッセージではないとできない」という魅力が薄かったのです。

4. +メッセージの教訓

+メッセージの事例から、後発サービスが先発サービスを超えるためには、圧倒的な利便性や差別化要因が必要だと言えます。

比較項目LINE+メッセージ
参入時期2011年に先行して参入
早期のユーザー獲得により強力なネットワーク効果を確立
2018年に後発で参入
LINEの既存ネットワーク効果を超えることが困難
SMS対応SMSに非対応、サービス利用者同士のみ
ユーザーの導入圧力となった
SMSとRCSの両対応による利便性の訴求
アプリは必須ではなく、導入圧力が弱かった
運営LINEの単独サービスとして運営通信キャリア3社が共同で運営

単に先発サービスの機能を模倣するだけでは、ユーザーの獲得は難しいでしょう。

また、ユーザーに導入を促すための適度な「ハードル」も重要だと考えられます。
アプリのインストールが必須でないことが、かえって普及を妨げる可能性があるのです。

4-1. ユーザー体験の独自性がユーザー基盤を作った事例

アプリ特有のユーザー体験の有無が普及において重要な役割を果たした事例はいくつか見られます。

  • Instagram
    スクエア形式の写真、フィルター効果など、写真に特化したシンプルなユーザーインターフェースで人気になりました。
  • TikTok
    短尺の縦型動画、アルゴリズムによるおすすめ機能、BGMとの同期など、ショート動画に特化したユーザー体験で流行しました。

一方、大規模な投資にもかかわらず、独自性のあるユーザー体験を提供できず、失速または失敗したアプリやサービスもあります。

  • Google+
    GoogleがFacebookに対抗して立ち上げたSNSですが、Facebookとの差別化要因が明確でなく独自性に欠けました。

4-2. LINEの牙城が崩れるとき?

LINEは、メッセージアプリの「インフラ」の地位を築いています。
その牙城が崩れるのは、大きな技術革新や社会的ニーズの変化が起こるタイミングでしょう。
すでに、いくつかの萌芽が見られます。

  1. 社会的ニーズの変化
    リモートワークの普及で、より高度なコラボレーション機能を備えたメッセージサービスが求められてきています(Microsoft Teamsなど)。
    仮想空間内でのリアルタイムコミュニケーションが注目を集める可能性もあります(メタバース)。
  2. プライバシーやデータ保護
    政府による規制強化がメッセージサービスに影響を与える可能性があります。
    暗号化技術を用いたメッセージサービスが注目を集める可能性もあります(Telegram、Signalなど)。
    分散処理やブロックチェーン技術によって、ユーザーのデータ主権を重視するメッセージサービスが普及するかもしれません(Web3)。
  3. 大きな技術革新
    将来的にはテキストベースのメッセージ自体が「時代遅れ」になる可能性もあります。
    例えば、AIによる音声と文字のシームレスな伝達や、さらに脳機能を直接読み取る技術が実用化されれば、思考を直接伝達するようなメッセージが登場するかもしれません。
LINEの牙城が崩れるとき?

しかし、LINEのデータ移行の難しさやプライバシーの問題が注目されるようになり、+メッセージを再評価する流れも少しあります。

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