どうして、iPhoneのブラウザは「Safari」っていう名前なのかな?
「サファリ」って、車に乗って野生動物を観覧することでしょ?
「Safari」が生まれた当時、すでに普及した他のブラウザの名前をみると、Internet Explorerや Netscape Navigatorなど「探検」のイメージが一般的でした。
後発のブラウザである「Safari」の発表会では、特に「スピード感」のあるインターネット体験が強調されていたので、ブラウザ名として車で疾走する “サファリ” のイメージが採用されたのだと考えられます。
「探検」+「スピード感」→ 「サファリ」
1. Safariの発表会
「Safari」というブラウザの名前は、2003年1月8日に初めて発表されました。
「Internet Explorer for Mac」に代わる独自ブラウザとして、「高速」を売りにしていました1。2。
2. 当時のブラウザに共通する「大航海時代」の雰囲気
Safariだけでなく、初期に普及したインターネット・ブラウザの名前には、「大航海時代」や「探検」を連想するような、共通するイメージがありました。
「Netscape Navigator」を訳すと、「ネット景観の航海士」(「landscape(風景)」からの類推)。
「Internet Explorer」は、「インターネットの探検者」。
「Safari」は、「探検旅行」(スワヒリ語に由来する)。
それぞれの初期のアイコンを見ると、「船の舵」「地球儀と虫眼鏡」「方位磁針」です。
インターネット上には「宝」のような情報が埋もれている時代だったのかぁ。「秘境」だったんだね。
今の「情報流出」とか「拡散」、「炎上」とはちょっと違う雰囲気なのかもね。
2-1. 検索エンジンが実用化した時代
検索エンジンができる以前のインターネットでは、求める情報にアクセスするには「リンクを一歩ずつたどる」必要がありました。同時に、検索エンジンの登場で急速につながっていった時代でもありました。
今でこそ、インターネットで情報を探すには「検索エンジン」が「当たり前」ですが、膨大なウェブページを機械処理する仕組みが出来上がるまでは、人が登録した「リンク」をたどって探し回る必要がありました。誰でもかんたんに同じ情報を見つけられるわけではなかったのですね。
今でも、インターネットにつながっているウェブサイトには、検索エンジンに載せられていないものもあります。既存のページとつなげなければ、検索エンジンに巡回されることはないからです。例えば、ログインして表示するページなどは検索されません。
つまり、検索で見つかるウェブサイトは、インターネットにつながっているうちの一部です。しかし、多くの人にとって、検索されないページの存在はあまり意識されません。
2-2. Netscape NavigatorやInternet Explorerの後に Safariは登場した
時系列的には、Netscape Navigator がインターネットの個人利用が広がっていく時期(1995年ごろ)に登場します3。
その後 Internet Explorer が バージョン 5 から パソコンの標準ブラウザとして覇権を握っていきます(1999年ごろ4)。同時期には、Google検索が登場し(1997年)、徐々にインターネット検索の精度が向上していきました。
Safari が Mac用のOS X の標準ブラウザとして登場したのは、Googleの検索エンジンとしての地位が確立された頃と言えます(2003年5)。「Google Chrome」が登場するのは さらにその後、2008年からです。
「Safari」は今も Macや iPhone/iPad で使われていますが、「Netscape Navigator」は「Mozilla Firefox」へと受け継がれ、「Internet Explorer」は「Microsoft Edge」に入れ替わりました。
インターネット・ブラウザでは、設計の優先度が効率性から安全性へと変わったため、どのブラウザでも大掛かりな更新・変更がありました。
3. 幻の「Freedom」から逆算する ユーザー目線
ちなみに、「Safari」の発表前には、社内では「Freedom(自由)」という名前も検討されていたようです6。これは、やっと独自ブラウザが完成して、Microsoft製の Internet Explorerから「解放された」ことに由来していました。
しかし、スティーブ・ジョブズによる当日のプレゼンテーションを見ると、Safariの発表で、いの一番に強調したのは「ターボ・ブラウザ」「スピード」です。
つまり、社内的な「意義」ではなく、利用者にとっての「価値」を重視していたことがわかります。
そう考えると、「Safari」という名前には 「サファリ」でジープを乗り回して自然を観察するような、「ワクワクするスピード感」が込められているのかもしれません。
こちらもどうぞ。
(補足)
- 「SafariはMacで使うことのできる最も速いブラウザです。多くのユーザもこれまで作られた中でベストのブラウザだと感じることでしょう。何年にもわたって新製品の発表がなかったブラウザ分野に、アップルがもう一度革新をもたらします。」と、アップルのCEO(最高経営責任者)スティーブ・ジョブズは述べています。 – アップル、Safariを発表(2003年1月8日)
- – Macworld 2003 – Full keynote – YouTube
- それ以前にも、すでにMosaicなどブラウザはありましたが、一般向けに普及し始めたのは Netscape Navigatorからと考えて差し支えないと思います
- IE5は標準準拠を比較的重視した手堅い設計でIE4と同様当時のブラウザとしては完成度が高く、OSとバンドルの効果も相まって高いシェアを得た。 – Internet Explorer – Wikipedia
- Safariの革新的な機能として、ツールバーから直接Googleの検索機能を使うことができるようになっている – アップル、Safariを発表 – Apple (日本)
- – Apple’s Safari browser was almost called ‘Freedom,’ thanks to Steve Jobs | Network World