- 「報酬付きレビュー」とは、商品やサービスに高評価のレビューを書いた人に報酬を提供する広告手法のことです。
- 報酬付きレビューはレビュー全体の信頼性を損ねて、何がよい商品・サービスなのか、という消費者の判断を歪めてしまいます。
- 悪質な場合は景品表示法に違反となる「ステマ」として行政処分の対象になることもあるのです。
評価を良くしたいなら、商品の方を良くすればいいのに。
レビューで割引って、「買収」みたいなもんなんだね。
報酬付きレビューを提示してくる業者には注意しないと。
YouTube動画でも話しています。
1. 「レビューで割引」っていいの?
たまに、「商品購入後にAmazonの高評価をするとキャッシュバックします」とか、あるいは「Googleマップの口コミで高評価をすると割引をします」といったキャンペーンを見かけることがあります。
「口コミを買っている」ようでなんかモヤモヤします。
そのせいか、値段の割に評価スコアがよいのにレビュー内容は薄く、購入後にがっかりする商品がある気がします。
これは「報酬付きレビュー」や「インセンティブ付きレビュー」と呼ばれる手法です。
商品やサービスに対して高評価のレビューを書いた人に、現金や割引などの報酬を提供する広告手法の一種ですが、レビューを誘導する問題性があります。
企業側が介入した口コミは消費者の正当な判断を妨げてしまうおそれがあり、悪質な場合は「ステルス マーケティング」として、各プラットフォームの利用規約や景品表示法などのルールに抵触してしまいます。
1-1. ギフトコードをプレゼントは規約違反(Amazonレビュー依頼)
Amazonで商品を購入すると、一部の販売店では商品にサンキューカードやチラシなどを同梱されていることがあります。
レビューを書くためのページへのQRコードやレビュー依頼だけなら問題ありません。
しかし、高評価を直接的に依頼したり、レビューの見返りとしてクーポンや返金、プレゼントなどの報酬を提供する事例があります(廉価な製品を販売する海外業者に多い)。
「星5つのレビューを投稿した証拠画面を店舗に送ったら、1000円のギフトコードがもらえる」などと書かれています。
これは、Amazonで禁止される規約違反です。
このような店舗は、いつの間にかAmazonから削除されていることも多いです。
1-2. 報酬付きレビューは行政処分になることもある(Googleマップ)
Googleマップでの口コミが問題になる事例もあります。
たとえば、ある診療所がインフルエンザワクチン接種を受けた患者に対し、Googleマップ上のクリニックの口コミ欄に星5つの高評価を投稿することを条件に接種費用から550円割引することを提示した、という事例がありました1。
実際にこれに応じた患者が高評価の口コミを多数投稿し、その口コミが診療所の依頼によるものだと一般消費者には区別できない状態でした。
このことが景品表示法で禁止される「一般消費者が事業者の表示だと判別することが困難な表示」に該当するとして、消費者庁から「違反表示の取りやめ」と「一般消費者への周知」などを指示する措置命令が公表されました。
この事例では、「キャンペーン期間中に不自然に高評価が増えたこと」が判断材料の一つになりました。
消費者庁では、「一般の人もステマの提案を受けず、情報提供してほしい」と呼びかけています2。
500円ぐらいの割引でもダメなんだね。
このような報酬付きレビューは、景品表示法だけでなく、Googleマップの利用規約にも違反します。
2. レビューと報酬を結び付けない
ここで問題になるのは、「報酬」と「レビュー」がセットになっていたこと。
たとえば、報酬を条件にせず、単に「口コミをお願いします」と依頼するのは大丈夫。
また、宣伝効果を期待して公開する「口コミ」でなく、商品改善を目的とするモニター調査なら問題はありません。
2-1. 報酬付きレビューの目的は広告
このような「報酬付きレビュー」が提供されるのは、商品やサービスの露出を高めることが主な目的です。
報酬を提供してでも多くのレビューを手っ取り早く集めれば、売上を上げて取り戻せる可能性があるからです。
特に、AmazonやGoogleマップなどは、表示順位を決める判断材料に「レビューの評価」を重視しています。
しかし、「広告表示」は、PR表記などで「事業者の依頼による表示」だと消費者に区別できるようにしない場合、「ステルス マーケティング」とみなされます。
とくに、2023年10月からは景品表示法が改正され、規制対象になっています3。
景品表示法第2条第4項
この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。
不当景品類及び不当表示防止法 | e-Gov法令検索
ここでの「内閣総理大臣が指定するもの」では広告媒体を示していて、具体的には「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件[PDF: 120KB]」によって、公正取引委員会から告示されています。
この中に「5. 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)」とあります。
2-2. 報酬付きレビューの問題点
このような報酬付きレビューが多用されるのは、
あまり知られていない商品だったり、
すでに悪い評価がついてしまった商品だったりすることが多いです。
自然と高評価がつく商品には、報酬は必要ないもんね。
問題点としては
- レビューの信頼性が損なわれる
報酬目当てのレビューが増えると、実際の商品やサービスの質とは乖離した評価が蔓延します。 - 公平な競争を阻害する
資金力のある企業が報酬型レビューを大量に投入すると、通常の商品が売れにくくなります。 - 法的・倫理的な問題
場合によっては景品表示法などに抵触する可能性があります。
小規模事業者だとコンプライアンス上の問題点を知らずに「通常の広告活動」と勘違いして実施してしまう多いです。
確かに、最近はレビューのスコアが高くても、レビュー内容が薄かったらかえって怪しいと思うもんね。
報酬付きレビューに過度に依存することは長期的には企業・店舗の信頼の喪失につながってしまいます。
(補足)
- 消費者庁は、令和6年6月6日、医療法人社団祐真会に対し、同法人が運営する「マチノマ大森内科クリニック」と称する診療所において供給する診療サービスに係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法第5条第3号(ステルスマーケティング告示)に該当)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令を行いました。 – 医療法人社団祐真会に対する景品表示法に基づく措置命令について | 消費者庁
- 同庁は「事業者がステマをしないのは当然だが、一般の人もステマの提案を受けず、情報提供してほしい」としている。 – ステマで初の行政処分 医療法人、マップに星依頼―消費者庁:時事ドットコム
- 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 | 消費者庁