- 「Alt(オルト)」キーは、他のキーと組み合わせることで追加機能を持たせる「装飾キー」。
- 「Alternate(代替する)」を意味し、マウスやタッチ操作のなかった時代に、限られたキーで多様な操作をできるようにするためのキーでした。
- 似たような修飾キーに、ShiftキーやControlキーがあります。
現代のパソコン・スマートフォンだと、特殊なキーの必要性は減っているね。
画面内に状況に応じたボタンを表示できるから。
1960年代のコンピュータ環境を反映するキーですね。
1. コンピュータ黎明期のキーボード事情
パソコンのキーボードには「Alt」というキーがありますが、なぜこのキーが必要なのか考えたことはありますか?
実は、このキーには興味深いコンピュータの歴史が詰まっています。
1960年代、コンピュータのキーボードは電動タイプライターをベースに作られていました。
IBMが1964年に発売した2741端末は、わずか44個のキーしか持っていませんでした。
これは現代の標準的なキーボード(101〜104キー)と比べると、半分以下です。
なぜこれほど少なかったのでしょうか。
主な理由は製造コストでした。
1つのキーには機械的なスイッチや電気接点が必要で、キーを増やすほど部品点数が増え、製造コストが上昇します。
また、部品が増えることは故障のリスクも高めることを意味していました。
2. コマンドで操作する時代の課題
当時のコンピュータには、現代のようなグラフィカルな画面(GUI)はありませんでした。
代わりに、全ての操作をキーボードから文字で入力するコマンドライン方式が使われていました。
このような環境で、限られたキー数でいかに多くの操作を可能にするか。
これは当時のエンジニアたちにとって大きな課題でした。
そこで考え出されたのが、「Alternatate(代替する)」を意味する「Alt」キーでした。
これは、他のキーと組み合わせることで、キーに第2、第3の機能を持たせるというアイデアでした。
「F」キーは通常はアルファベットの「F」を入力しますが、「Alt」キーと一緒に押すと「ファイル」メニューを開くといった具合です。
この工夫により、44個のキーでも、はるかに多くの機能を使えるようになりました。
3. 現在は使う頻度は減った
現代のパソコン・スマートフォンは、GUI(グラフィック・ユーザー・インタフェース)が主流。
必要な時に必要なボタンを画面に表示し、マウスやタッチパネルで「押す」ことができます。
自由に仮想的なボタンを増やせるので、物理的なキーの数を増やさなくても、多様な操作が可能です。
しかし、パソコンでは今でも「Alt」キーが重要な役割を果たしています。
ショートカットキーの一部として使われ、作業効率を大きく向上させているのです。
例えば
- 「Alt + Tab」で開いているウィンドウを切り替えたり、
- 「Alt + F4」でプログラムを終了したりできます。
「Alt」キーの歴史は、コンピュータの進化そのものを物語っています。
製造コストや技術的制約の中で生まれた創意工夫が、やがて標準となり、現代でも私たちの作業を効率化し続けているのです。
キーボードの1つのキーから、このようなテクノロジーの歴史を垣間見ることができるのは、とても興味深いことではないでしょうか。