- Microsoftは、Windows 11の新機能「Recall」をCopilot+ PC向けに発表しました。
- Recallは、AIを使ってPC上の作業画面を記録し、後から簡単に検索・再開できる機能です。
- データはローカルで処理・保存され、暗号化されますが、まだセキュリティ・プライバシーの懸念が払拭できていません。
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1. Windows 11の新機能「Recall」
2024年5月、Microsoftは 「Copilot+ PC」と呼ばれる新しいタイプのWindows PCの新機能として「Recall」を発表しました1。
「Recall」は、人工知能(AI)を使ってパソコン上での作業画面そのものを記録し、後から簡単に探せるようにする機能です。
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ただし、現在はいわば「実験段階」。
まずは2024年10月にプレビュー版の提供を始める予定になっています2。
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一般向けPCに組み込まれるのは、いろいろ問題点を検証した後になりそうです。
1-1. 「Copilot+ PC」というカテゴリ
「Copilot+ PC」は、Microsoftが導入した新しいカテゴリーのWindows PCです。
Microsoft Surface や Acer、ASUS、Dell、HP、Lenovo、Samsung などで「高性能機」として販売されます3。
従来のWindows PCに比べ、AI機能を最大限に活用できるよう設計されています。
- 高性能なニューラルプロセッシングユニット(NPU)が搭載されている
- 「Windows Copilotランタイム」と呼ばれる専用のソフトウェア環境が搭載されている
- ハードウェアレベルでのセキュリティ機能(Secured-core PCなど)と統合されている
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これまでも高性能で軽量なノートパソコンを「Ultrabook(ウルトラブック)」という特別なカテゴリで呼んだりすることがありました。
ほかの(低価格帯の)パソコンと区別するための「ブランディング」ですね。
2. あれ?どこいったっけ?
「Recall」は、英語で「思い出す」という意味です。
過去の作業内容を時系列で見たり、キーワードで探したりできます。
記憶にある単語で検索すれば、過去のパソコン画面を再度表示できます。
「あの時見たウェブページをもう一度見たい」といった場合や、「途中で閉じてしまった文書ファイルの最後に編集していた箇所を見つけたい」といった場合に活用できます。

Recallはユーザーの記憶を補助し、デジタル情報の管理を効率化する機能なんです。
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一方、プライバシーの懸念をする文脈で「REC ALL(すべて記録する)」と揶揄されることもあります。
2-1. 記憶した時点から「再開」する
さらに、検索した時点からそのまま作業を再開できる仕組みも用意されています。
WindowsにAI機能を統合する上での重要な技術基盤として「Windows Copilot ランタイム」があります。
ソフト側が対応している必要があるのですが、アプリ開発者が「UserActivity API」を利用すると、中断した作業を正確に再開できるようにする機能を提供できます。
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まるでゲームの「セーブポイント」みたいだね。
3. 常に「記録」する是非(プライバシーの問題)
Recall 機能を有効にすると、ユーザーがPC上で行った操作は記録され、スクリーンショットが数秒ごとに撮影されて保存されます。
このとき単純に画像を保存するだけでは後で探せません。
そこでAIを使って画像認識を行います。
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このような「下処理」をしておくので、キーワードで検索できるようになるわけです。
そのため、プライバシーの問題が指摘されています。
たとえば、パスワード管理ソフトやインターネットバンキングの操作など、大切な情報もそのまま記録される可能性があるからです。
一応、Recallでは、どの画面を記録するかを選んだり、記録した内容の一部または全部を消したりできます。
3-1. 「AIをパソコンに閉じ込める」(ローカルAI)
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AIで画像認識しているんだよね。
自分の見ている画面がインターネットに送られたりしないの?
Microsoftによれば、Recallで保存されるデータはインターネット上には送信されないそうです。
すべての処理と保存がデバイス上でローカルに行われる設計になっています。
クラウドAIで情報処理をするわけではないのです。
そのため、パソコン本体の中でAI機能を動作させるため、かなりの処理性能があるパソコンでしか動作しません。
また、保存データは「BitLocker」という技術で暗号化されます。
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ざっくり言えば、今のところはハイグレードなパソコン向け機能ってことだね。
AIといえば、大型コンピュータが何台も必要かと思っていたけど、もう自分のパソコンの中でも動かせるようになり始めているんだね。
3-2. まだまだ開発途上
ただし、Recallがちゃんと想定どおりに動作するかはまだ不透明です。
というのも、Recallの発表後、すぐにセキュリティ研究者らによって「欠陥」が見つかり、急いでセキュリティ対策が追加された事例があるからです4。
「Windows 11」のロックが解除されている状態だと、Recallのログを解析できてしまったのです。
つまり、パソコン本体が盗まれロック解除できる状態なら、悪意のある人物にパソコン上での動作が「筒抜け」になってしまうのです。
そのために、Microsoftは、デバイスのロック解除に生体認証機能で保護したり、Recallの保存情報を保護する暗号化レイヤーを追加したり、などの安全策を追加しました。
まだまだ、利用していく段階で想定外の「抜け穴」が出てくるかもしれません。
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Recallはプライバシーとセキュリティを考慮した設計になっていたとしても、非常に「強力」な機能です。
よくわからずに使うと悪意のある人による攻撃の新たな標的になる可能性があります。
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やっぱり便利さよりリスクが多い気がするなぁ。

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
(補足)
- Copilot+ PC の紹介 – News Center Japan
- Copilot+ PCの「Recall」機能のプレビュー版、10月に提供 – Microsoft | TECH+(テックプラス)(2024/08/22)
- Microsoft Surface、そして、OEM パートナーである Acer、ASUS、Dell、HP、Lenovo、Samsung の薄型で軽量な、美しいデバイスで提供されます。これらのデバイスは本日から予約受付を開始し、6 月 18 日に販売を開始します。最低価格 999 ドルの Copilot+ PC は驚異的な価値を提供します。 – Copilot+ PC の紹介 – News Center Japan
- マイクロソフト、セキュリティ上の懸念から「Recall」機能の搭載を延期 – ZDNET Japan