- 一度 バッテリー交換したスマートフォンのバッテリーが、半年ほどで膨らんできました。
- それだけでなく起動してもリカバリー画面になっていました。
- 再度 互換バッテリーに交換したところ、起動できるようになりました。
- バッテリー内部の有機溶媒が酸化して、水素やメタンなどの有機ガスを発生しています。
YouTube動画でも話しています。
1. スマートフォンが動かない(バッテリーが膨らんで)
気づいたら、スマートフォンが「リカバリー画面」になって、起動しなくなりました。
よく見ると、バッテリーが膨らんでいます。
2. バッテリーを(再度)交換した
なんとか時間ができたので、取り寄せていたバッテリーを再度 交換しました。
すでにケースが膨らんで隙間があるので、分解は簡単です。
取り出したバッテリーと新しいものを並べてみると、はじめはぺったんこだったものが、パンパンに膨らんでいることがわかります。
バッテリーを入れ替えて起動してみると、エラー表示はなくなりました。
ちゃんと以前のように起動できるようになりました。
スマートフォンの内部メモリが破損してしまったのかと考えていたので、復活してよかったです。
3. バッテリー内にガスが発生する仕組み
膨らんだバッテリーって今にも破裂しそうに見えるけど、何が入っているの?
リチウムイオンバッテリーは、内部の溶液が酸化して水素やメタンガスが発生します。
これがバッテリーが膨らむ原因です。
一般的な電池の基本構造をみると、主に金属片(電極)と溶液(電解質)から構成されます。
リチウムイオンバッテリーもこの点は共通です。
違いは素材です。
リチウムイオンバッテリーの中には、電解質として有機溶媒(炭酸エチレンや炭酸ジエチルなど)が入っています。
ざっくり言えば、アルコールの仲間です。
電解質に炭酸エチレンや炭酸ジエチルなどの有機溶媒
+ ヘキサフルオロリン酸リチウム (LiPF6) といったリチウム塩を使う
例えば、炭酸ジエチルは、炭酸とエタノールを結合した引火点の低い液体です
この有機溶媒が過充電や温度上昇などで酸化すると、水素ガスや二酸化炭素、メタンガスなどを発生させます。
これが高熱や火花などで爆発し、有機溶媒に引火してしまう危険があるのです。
LIB内部ガスを分析した結果、LIB由来の主要な成分として水素(H2)、二酸化炭素(CO2)、炭化水素化合物等が検出された。
検出されたH2、CO2、メタン等の炭化水素や脂肪酸エステル等は電解液の溶媒の分解物と考えられる。別途行った電解液成分の分析において、有機溶媒と思われるEMC、DECが検出されており、これらの溶媒が充放電あるいはセルの温度上昇により分解され、ガスが生成した可能性が推察される。・LIB(リチウムイオン電池)
リチウムイオン電池 内部ガスの組成分析
・EMC(炭酸エチレン:Ethyl methyl carbonate)、
・DEC(炭酸ジエチル:Diethyl carbonate)
中のアルコールみたいなものが酸化していたのかぁ。
クジラの死体が腐って爆発するのと似ているね1。
3-1. リチウムイオンポリマーバッテリー
有機ガスが発生する仕組みは同じですが、スマートフォンのバッテリーは引火や爆発しにくくなるように改良されています。
それが「リチウムイオンポリマーバッテリー」です。
有機溶媒をそのまま使うと引火や液漏れの心配があります。
そこで、リチウムイオンポリマーバッテリーでは、電解液をポリマー(高分子素材)に含ませて固めているのです(ゲル化)。
バッテリーには、
「リチウムイオンバッテリー(LiB)」と
「リチウムイオンポリマーバッテリー(LiPo)」の区別があります。
動作原理はまったく同じですが、電解質が異なるのです。
1999年、ソニー・エナジー・テックと松下電池工業は電解質にゲル状のポリマーを使うリチウムイオンポリマー電池を商品化した。
リチウムイオン二次電池 – Wikipedia
見た目もぜんぜん違うね。
ポリマーで固めるので製造コストが高くなりますが、引火しにくくなります。
また、外装容器がアルミラミネート袋にできるので薄型にもできます。
また、電子機器に内蔵されているリチウムイオンポリマー電池には、それ自体に充放電制御回路や短絡・過熱保護回路が付属しています2。
今回のバッテリーがすぐに膨らんできたのは、充放電制御がうまくいっていなかったのかな。
ただし、強い衝撃や熱を加えると危険なことには変わりないので、ふつうのゴミと一緒には捨ててはダメです。
家電量販店などの廃品回収サービスで確認しましょう。