最近のプリンタは、パソコンから無線を通じて印刷できるものが増えました。
うまくいっているときはいいのですが、いったん調子が悪くなると、どうすればいいのかわかりにくいものです。
そこで、ここではプリンタの歴史を追いながら、「プリンタの仕組み」について説明したいと思います。
キーワード:ローカルプリンタ、プリントサーバ、ネットワークプリンタ
ローカルプリンタ
いきなり、プリンタを共有するのは難しいので、まずはシンプルな話からしましょう。
一台のパソコンと線でつないだプリンタのことを「ローカルプリンタ」と言います。
あとで説明する「ネットワークプリンタ」の対義語になります。


- ローカルプリンタ……一台のパソコンと線でつないだプリンタのこと。
主に、「USB接続」が採用されています。
昔はほとんどのプリンタがローカルプリンタでした。
以前は、USB接続ではなくもっとごつい配線も多かったんですよ。
基本的にローカルプリンタは、接続しているパソコン1台でしか印刷はできません。
今も家庭用のプリンタは、このつなぎ方のものが多いです。
プリンタのセットアップは何のため?
プリンタはパソコンにつないでも、そのままでは印刷できません。
はじめに「初期設定(セットアップ)」が必要になります。
たいていは、付属するディスクをパソコンに入れ、指示に従って「はい」をクリックしていくことになります。
この「セットアップ」はいったい何をしているのでしょうか?


基本的にはパソコンに「プリンタドライバー」というシステムファイルを入れていることになります。
パソコンは、印刷データの「送り先」を知る必要があります。
プリンタの型番やケーブルの番号などをパソコンに登録することで、印刷データが正しくプリンタのもとに届くように設定していることになります。
いわば、「住所の登録」をしているわけですね。
- プリンタのセットアップ(setup)……パソコンに印刷データの送り先情報を登録している。
プリンタドライバがプリンタを動かす
さて、プリンタドライバーとは何かについて、もう少し詳しく説明しましょう。
「ドライバー(driver)」は、「車の運転手」と同じ単語で、この場合はコンピュータの周辺機器を「動かす」ためのシステムです。
コンピュータの周辺機器は、「それに対応するドライバーがないと、操縦者がいなくて動かない」わけです。
周辺機器を購入したディスクの中にあるドライバーのデータを、パソコンのハードディスクにコピーして、使えるように登録しています。
- ドライバー(driver)……コンピュータの周辺機器を「動かす」ためのシステムファイル
- プリンタドライバー……パソコンの文書ファイルなどをプリンターにわかる印刷データに翻訳し、プリンターに送るためのシステムファイル
スプールファイルは印刷データのこと
「プリンターを動作させる」のがプリンタドライバーの役割であり、機能なんですが、具体的には「パソコンの文書ファイルなどをプリンターにわかる印刷データに翻訳し、プリンターに送ってあげる」というのがその仕事です。
この印刷データのことを「スプールファイル」といいます。


スプールファイルは印刷の指示(印刷ジョブ)のたびに作られ、印刷が終われば基本的に消去されます。
なので、プリンタを使っている人間は、通常あまり意識することはありません。
- 印刷ジョブ……コンピュータが指示された印刷命令のこと。いろんなソフトで「印刷実行」をクリックすると印刷ジョブが追加される。
- スプールファイル……プリンターが解釈できる印刷データのバイナリファイル。
- バイナリファイル……人間には理解しにくい数値データをならべたファイル(対義語はテキストファイル)
プリンタメーカーとコンピュータメーカーは、それぞれ独自に機械を設計しています。
そのため、プリンタにデータを転送する場合には、メーカーや機種に応じた印刷データの形式にする必要があります。
パソコンの基本システム(Windows)は、プリンタドライバを使って、そういう変換をしてプリンターが解釈できるバイナリファイル(スプールファイル)を作成しています。
スプールのもう一つの意味は「印刷待ち」
これは、少々マニアックな話かもしれませんが、パソコンからプリンタで印刷をするときに、「印刷中」のウィンドウが出てきますよね。
あの時間、「勝手にパソコンを操作していけなくて、印刷が終わるまで待たなくてはいけない」と考える人がいます。
ところが実際は、印刷処理はプリンタに任せてしまって大丈夫。
パソコンの操作を続けて構いません。
もともとプリンタの印刷速度は、プロセッサの処理速度に比べると遥かに遅いです。
パソコンの画面ではパっと画面が切り替わるのに、印刷するのには1枚ごとに数秒はかかります。
このため、印字開始から終了までプリンタにかかりっきりだと、コンピュータのプロセッサが他の作業に使えない状態に陥ってしまいます。
特に、何個も文章を印刷するときに、印刷完了を待ってから、つぎのファイルを印刷指示する、なんて大変ですよね。
そこで、いったんハードディスクなどに印刷データを作って置いておいて、プリンタの印刷の進行状況に応じて、間を空けて少しずつ処理を行うことで、他の処理を並行して行うことができる仕組みを作ったんです。
これがスプールファイルのもう一つの意味で、この仕組みのことを「スプール処理」といいます。
- スプール処理(spooling)……プリンタへの印刷要求(ジョブ)を一時的に保存し、順番に少しずつ実行していく仕組みのこと。ミシンの糸繰り機構に似ているので、「spool(糸巻き)」と呼ばれる。ちなみに、ミシンの糸繰り機構は、縫い糸を置いておいて、ミシンは必要に応じて必要なだけの糸を自動的に引っ張ることができる。
印刷ジョブとエラー
- Wordなどアプリケーションソフトから「印刷」ボタンをクリックすると、印刷ジョブが追加されます。
- スプールファイルがつくられ、コンピュータ上に一時的に保存されます。
- プリンタが印刷を受け付ける準備が整っていれば、コンピュータからプリンタに印刷データ(スプールファイル)が一つずつ送られます。
- 印刷が完了したら、印刷ジョブは削除されます。
よくあるのが、3番で止まるパターンです。
コンピュータでの印刷ジョブの削除
プリンタが印刷中でなくても、接続が不安定だったり、プリンタ自体が動作がおかしいと、印刷を受け入れできないことがあります。
その場合は、印刷ジョブは待機します。
しかし、プリンタ転送中にうまくいかない場合は、「エラー」になり、ほかの印刷もストップしてしまいます。
いくら待っても印刷できない場合や、印刷を取り消したい場合は、印刷ジョブを削除します。
プリンタの印刷取消
すでにプリンタに印刷データが送られているかも重要です。
その場合は、コンピュータから印刷ジョブを取り消せない場合があります。
その場合は、プリンタにある「取消ボタン」を押したり、一度電源を切ったりすることがあります。
スプールフォルダ
ちなみに、まったくの豆知識ですが、スプールファイルがどこに保存されているのでしょう?
それは、プリンタについてのプロパティから探すことができます。
「デバイスとプリンター」を開き、一つのプリンターを選択すると、メニューに「プリントサーバープロパティ」が表示され「プリントサーバープロパティ」を実行します。


「詳細設定」タブに、スプールフォルダのパスがあります。
スプールフォルダのパスは、C:\Windows\system32\spool\PRINTERS


まとめ:プリンタは送られたスプールファイルを印刷している
ここまで、ちょっと詳しくプリンタとパソコンの関係をお話してきました。
もう一度整理すると、プリンタとパソコンをつないでいるのは、物理的にはケーブルなんです。
しかし、データ的にはプリンタドライバとスプールファイルが重要です。
したがって、印刷がうまくいかなくてプリンタ側で原因がわからなかったときは、このスプールファイルがうまく送られているかをチェックする必要があります。
とくに、最近は画質が向上して印刷データが複雑になり、スプールファイルが大きくなっています。
データが大きすぎると、うまく転送できないことがあるのです。
次回は、一つのプリンタを共有する仕組み、「プリントサーバー」について解説していきますね。
確認問題
- プリンタのセットアップでは、主に何のデータをパソコンに入れていますか?
- プリンタのセットアップで、ほかのメーカーのセットアップディスクを流用できないのはなぜ?
- 高画質の写真が多かったり、ページ数の多い文書の印刷ほどエラーが起きやすいのはなぜ?
解答例
- プリンタドライバー
- メーカーごとにプリンタの設計が違うから
- スプールファイルのデータサイズが大きくなるから