- IMSは、通信事業者が音声やビデオなどのマルチメディアサービスを提供するためのIPベースのネットワークです。
- 従来の回線交換方式から移行し、ネットワークの効率のよいパケット交換方式を採用しています。
- VoLTE(音声通話)やRCS(テキストメッセージ)などで、より高品質な通信と効率性を提供しています。
電話で使われてきた回線交換ネットワークと、データ通信のインターネットを折衷した仕組みなんだね。
YouTube動画でも話しています。
1. IMSはIPベースの通信に切り替える
「IMS」は、通信事業者が音声、ビデオ、データなど(マルチメディアサービス)をやり取りするために使うネットワークです。
IMSは従来の回線交換方式の通信から、IPベースの通信に移行するための技術で、「IP Multimedia Subsystem」の略です。
1-1. IMSと回線交換ネットワークの違い(パケット交換方式)
IMSの商用展開を通信事業者が開始したのは 2008年ごろですが、本格的に普及していくのは2010年代前半のLTE(4G)の導入のタイミングでした。
IMSと回線交換ネットワークは、通信サービスを提供するためのアプローチが異なります。
- 回線交換方式:
連続的なデータを流し続ける - パケット交換方式:
離散的なデータに分割して送信
回線交換は、主に音声通話とSMSで使われます。
シンプルな仕組みで専用の物理的または論理的な回線をつないで通信します。
しかし、従来の回線交換方式では、いったん接続すると通話中は回線が占有され、未使用時間があってもリソースが解放されませんでした。
一方、IMSはインターネットと同じような IPベースのシステムで、パケット交換方式を採用しています。
データを分割し、その時々に最適な経路で送受信するため、ネットワークの効率が大幅に向上しました。
現在の通信ネットワークでは、両者が共存しながら徐々にIMSベースのサービスへの移行が進んでいます。
1-2. IMSとインターネットの違い(品質保証)
IMSはIP(インターネット・プロトコル)を使う通信ネットワークですが、一般的なインターネットとも異なります。
インターネットは、世界中のコンピューターネットワークを相互に接続した、巨大な公共通信網です。
主にTCP/IPというプロトコルを使用しています。
一方、IMSは、通信事業者が管理する閉じたネットワーク内で運用されます。
SIP(Session Initiation Protocol)を中心としたプロトコルを使用します。
IMSは、わざわざ通信事業者が厳密に管理・制御するネットワークを用意しているのは、一般のインターネットよりも高い品質保証(QoS)やリアルタイム性を実現するためです。
インターネットは、中央に管理者がいるわけではなく、分散管理の仕組みです。
2. IMSで品質が上がったサービス
IMSは、従来の回線交換方式の通信サービスをIPベースのサービスに移行する「橋渡し」です。
音声通話やショートメッセージの通信効率が上げることができます。
また、それだけでなく、ビデオ通話、位置情報共有など、さまざまなマルチメディアサービスも統合的に提供できるようになりました。
2-1. 音声通話サービス(VoLTE, VoNR)
4G LTEネットワークが導入されたとき、音声通話をより高品質にするために、「VoLTE(Voice over LTE)」という技術が出てきました。
名前は聞いたことがあるね。
VoLTEでは、音声通話において従来の回線交換方式から、「IMS」が利用したIPベースに移行します。
パケット交換方式を採用し、音声データは小さなパケットに分割してから、最適な経路を動的に選んで送信されるのです。
VoLTEの商用サービスが実用化されるは、2014年頃からです。
さらに2019年ごろからは、5Gネットワークの商用化が進みます。
5Gの音声通話サービスは「VoNR(Voice over New Radio)」と呼ばれますが、VoLTE同様にIMSを利用しています。
VoNRは、VoLTEの5G版と考えることができます。
2-2. テキストメッセージ(RCS)
SMSの後継である「RCS」でも、IMSをネットワークとして利用しています。
「RCS(Rich Communication Services)」では、テキストメッセージング、グループチャット、ファイル共有などの豊富な機能を提供できるようになりました。
ただし、RCSは、従来のSMS(Short Message Service)との互換性も維持しながら、提供されています。
RCSが利用できない相手の場合は、自動的にSMSに切り替わります。
そのため、あまり違いを意識せずに普及しています。