- 広告ブロックツールの使用増加により、ニコニコ動画は年間1億円以上の損失を被っており、サービスの運営やクリエイター支援に影響が出ています。
- ユーザーの多くは、YouTubeやネットメディアの不快な広告を避けるために広告ブロックツールを使用していますが、一方でコンテンツ制作者への収益減少のジレンマも感じています。
- ニコニコ動画は、ユーザーに広告ブロックツールの無効化や除外設定を呼びかける一方、適切な広告配信に取り組むことで、ユーザーの利便性とクリエイター支援のバランスを取る、としています。
好きでやっている活動なら無償でもいいのでは……?
作り手にも生活があるから、それは困るよー。
最近、ネットメディアが生き残るには、適切な広告に「モデレート」する必要性を感じるね。
1. 広告ブロックツールの増加とメディアへの影響
近年、広告ブロックツールを使うユーザー層が増えていて、メディアにも大きな影響を与えるようになっているようです。
ニコニコ動画は、広告ブロックツール「AdBlock」により年間1億円以上の損失が発生していると報告しました1。
この損失は、サービスの運営・開発に影響を及ぼすだけでなく、クリエイター支援にも影響を与えているそうです。
1-1. ニコニコ動画の広告収益とクリエイター支援
ニコニコ動画の運営・開発は、プレミアム会員料金や広告収益によって支えられています。
広告収益は「クリエイター奨励プログラム」の原資としても活用され、クリエイターの活動支援や二次創作文化の推進に役立てられています。
しかし、広告ブロックツールの使うユーザーが増えると、本来表示されるはずの広告が非表示になってしまいます。
結果として、クリエイターへの適切な奨励金の分配が困難になっているとのことです。
1-2. 広告ブロックツールでの除外設定
ニコニコ動画の立場としては、ユーザーに対して広告ブロックツールの無効化や、ニコニコ動画のドメインをホワイトリストに登録することを呼びかけています。
また、広告ブロックツールへの対策も検討中だそうです。
一方で、不快な広告や不適切な広告が表示されることへの懸念も理解しており、問題のある広告は即時停止するなど、適切な広告配信に取り組んでいくとしています。
同様の主張は、これまでネットメディア「すまほん!」などでもありました2。
メディアは広告を出さないと運営できないけど、ユーザーにとっては多くの広告は「邪魔」なんだよね。
2. ユーザーが広告ブロックツールを使う動機
ところが、SNSを見てみると、多くのユーザーは、ニコニコ動画の広告自体は比較的良心的であると感じているようでした。
どちらかという、YouTubeやネットメディアの広告などで不快な内容のものが多いため、広告ブロックツールを使うようになっているようです。
一方で、広告ブロックツールを使うと、コンテンツ制作者への収益を奪い、有料なコンテンツが出てこなくなることのジレンマを感じている声も多いよね。
2-1. 特にYouTubeの広告の評判が良くない
YouTubeの広告は、15秒以上のスキップ不可の広告が多く、時には2本連続で流れることもあります。
しかも、YouTubeやネットメディアの広告には、質の低いものが多く存在します。
例えば、怪しげな商品の宣伝や、扇情的な内容の広告などです。
あるいは、性的なものや詐欺的なものであることも少なくありません。
これらの広告は、ユーザーに不快感を与えるだけでなく、時には有害な影響を及ぼすこともあります。
YouTubeには、YouTube Premiumという有料プランがあり、広告をオフにできます。
しかし、それもあって、「嫌がらせのような広告」増えているようにも感じます。
3. パーソナライズド広告の「勘違い」
ユーザーの興味や視聴している動画の内容と全く関係ない広告が表示されることが多いことも問題の一つです。
「パーソナライズド広告」のアルゴリズムが必ずしも有効に機能していないのです。
ニコニコ動画の広告は動画に関連しているものが多いのに対して、YouTubeは無関係なものが多い、という意見も多かったです。
本来、「パーソナライズド広告」では、ユーザーの行動履歴やプロフィール情報に基づいて、関連性の高い広告を表示することを目的としています。
しかし、この仕組みが逆効果になり、扇情的な広告が増加することがあるのです。
広告配信のアルゴリズムは、ユーザーのクリック率や興味関心など、数値化できるデータを基に最適化されます。扇情的な広告は、一時的にクリック率が高くなる傾向があるため、アルゴリズムがこれを「効果的な広告」と判断し、表示頻度を高めてしまうことがあります。
しかも、一部の広告主は、ユーザーのクリックを得るために、過激な表現や誇大な表現を用いることがあります。
それに対して、広告プラットフォームは、膨大な数の広告を取り扱っているため、全ての広告を厳密に審査できていません。
そのため、扇情的な広告が審査を通過し、表示されてしまうことがあります。
つまり、パーソナライズド広告が本来の目的とは逆に、ユーザーにとって不快な扇情的な広告を増加させてしまうことがあるのです。
広告ブロックツールの増加は、メディアの収益に大きな影響を与えており、適切な広告配信とユーザーの利便性のバランスを取ることが重要な課題となっています。
ニコニコ動画のように、クリエイター支援にも広告収益が活用されているサービスもあるため、ユーザーの理解と協力も必要不可欠だと言えるでしょう。