- 「図として保存」で作成された画像サイズは解像度と表示サイズで決まります。
- Word文書が保存されるときに、文書の内の画像は解像度(ppi)とサイズをもとに自動的に圧縮されます。
- ただし、この自動圧縮は Wordのオプション設定でオフにできます。
1. 印刷したときに写真がぼやける
あれー、印刷したら写真がぼやけた
WordやExcel、PowerPointに慣れていると、ちょっとした図表を作るのにも、デザインを作るのにも重宝します。
しかし、画像作成の専門ソフトではないからこその落とし穴があります。
図の解像度もそんな注意点の一つですので、ちょっと一緒に考えてみましょう。
2. 画素数:画質に関係する言葉のいろいろ
画質というのは、解像度と印刷サイズによって決まります。
画質については似た用語が多いので、少し整理しておきましょう。
- 画質に関する用語
- ピクセル数:画像自体の画素数
- 解像度:ppi, dpi 長さあたりの画素数
- 画像のサイズに関する用語
- 印刷時の大きさ:縦・横 cm
- 画像の大きさ:縦・横 pixel
- データの大きさ:KB, MB
2-1. ピクセル数
「ピクセル数」は、写真などをどれぐらい細かく分割したマス目に色をつけて表現するか、という数です。
この色をつける点を「画素(ピクセル)」といいます。
ピクセル数の大きな画像データを小さな範囲に印刷すれば「よい画質(高精細)」ですし、ピクセル数の小さな画像データを大きな範囲に印刷すれば「悪い画質」になります。
2-2. 印刷解像度と画像解像度(dpiとppi)
「解像度」は、表示媒体によって決められます。
プリンタなら印刷解像度、モニターには画面解像度があります。
例えば、あるプリンタの印刷解像度が「720dpi」だとします。
これは1インチ(約2.54cm)内にある点(ドット)の密度を表しています。
ドット? ピクセルじゃないの?
「ドット(点)」と「ピクセル(画素)」には、びみょーな違いがあるのでちょっと説明しますね。
コンピュータのディスプレイのドット(点)は、いろいろな色合いを表示できるので、「1ドット=1ピクセル」です。
その場合は、ppiとdpiは同じ数値です。
しかし、プリンタのドットは違います。
1つの点には一色のインクが有るか無いかだけなので、1つの画素を表現できません。
画像の1つの画素を表現するにはインクを混ぜる必要があります。
1画素を表現するのに4×4四方(16ドット)の色を混ぜるとすると、印刷解像度(dpi)÷4が実質的な解像度(ppi)になります。
だいたいのプリンタで、実質解像度(ppi)=印刷解像度(dpi)÷3ぐらい。
なので、例えば720dpiのプリンタなら240ppiの解像度になるわけです。
多くの印刷会社で「A1までの大きさなら通常印刷するデータは200~300ppiの解像度のデータを用意するように」と案内されています。
iPadなどのRetinaディスプレイでは、よりきれいに画面を表示するために1ピクセルを4ドットで表現しています。
なので、dpi÷2がppiになります。
3. Wordの用紙に図を入れる方法もいろいろ
Wordには、図を挿入する方法、そしてその図を取り出す方法がいくつも用意されています。
まず、前提として「図(画像)」と「図形」には大きな違いがあります。
「図の挿入」と「図形の挿入」は扱うデータに違いがあるのです。
3-1. 図の挿入(ビットマップ画像)
「図の挿入」は、写真やイラストなどの「ビットマップ画像」が文章に挿入します。
「ビットマップ画像」は、小さな色の粒(ピクセル)を並べたものです。
写真などの画像はピクセルを並べて表現されています。
一つひとつのピクセルは小さくて人間の目には「写真」として見えます。
しかし、拡大するとピクセルが目立ってしまい、画像が「荒く」なります。
3-2. 図形の挿入(ベクター画像)
いっぽう、「図形の挿入」は、円や四角といった図形をサイズを指定して挿入します。
一方、図形は拡大しても荒くなりません。
図形は円や四角を描く指示を記録しているので、拡大した状態で描き直すからです。
このようにサイズに合わせて描き直すタイプの画像を、「ベクター画像」といいます。
3-3. コピー・貼り付けでのデータ変換
「コピー」は元のデータをいったん「クリップボード」というパソコンの記憶領域に保存し、「貼り付け」のときに呼び出します。
「コピー」するときや「貼り付け」るときにデータの形式を変換することもあります。(図形→図にしたり、文字→図にしたり)
ベクター画像は拡大しても、画像が荒くならない
4. 図を「図として保存」する場合
いったんWordに挿入した画像はファイルとして保存して取り出すことができます。
それが「図として保存」。
そこで問題になるのは、「図として保存」したときの画質です。
いったんビットマップ画像にした画像は、拡大すると一つ一つのピクセルが大きくなってしまって、荒く目立ってしまいます。
ですので、きれいに印刷したい場合は、解像度を高くして保存しておく必要があるのです。
4-1. Wordの解像度とA4用紙のピクセル数
それでは、いったい図形を「図として保存」したときのピクセル数は、どのように決まるのでしょう。
Wordの場合は、通常は解像度が220ppiになっています。
A4サイズ(横210×縦297mm)のピクセル数を計算してみましょう。
WordのA4サイズの画素数は、全体として1818×2572ピクセルになります。
Wordの1ページはこのサイズの画像として印刷されるわけです。
A4のページいっぱいいっぱいの横幅1818ピクセルというのは、フルHDのディスプレイの横幅(1920ピクセル)と同じくらいです。
印刷した文字は画面でみるよりきれいなので解像度が良いのかと思いましたが、フルHDのディスプレイになるとそこまで違いがないんですね
4-2. 挿入された図を「図として保存」したときの圧縮率は?
Wordの中に写真を挿入して、10cm×10cmの大きさに配置してみましょう。
その時いくつの画素数になるかというと、866×866ピクセルです。
Word内の図形を「図として保存」すると、この解像度が適用されてしまいます。
実際に実験してみましょう。
まず、幅 5736ピクセルの画像をWordに挿入して、サイズを97.13mmにしてみました。
これを「図として保存」してみます。
すぐに「図として保存」した画像は、幅5736ピクセルのままです。
しかし、いったんWordの文書として保存すると状況が変わります。
保存した後に「図として保存」した画像は、幅841ピクセルになっています。
841ピクセルは、94.13mm÷25.4×220ppi(inch/mm)を計算した結果と一致していますね。
つまり、Word文書が保存されると、文書の内の画像は解像度(ppi)とサイズをもとに圧縮される、ということになります。
元の画像が高画質であっても関係ありません。
4-3. Wordで上書き保存をすると図は圧縮される
図は、縮小してから拡大しても元に戻りません。
縮小して、上書き保存をすると、図はサイズと解像度から必要なピクセル数に圧縮されます。
その後、拡大するとギザギザになってしまいます。
Wordに挿入した図(画像や写真)は、小さくして保存しない
5. オプション「ファイル内のイメージを圧縮しない」にチェック
画像挿入前にWordの「オプション」を変更することで、自動的な圧縮処理をしないようにできます。
「オプション」の「詳細設定」から「イメージのサイズと画質」の項目をみると「ファイル内のイメージを圧縮しない」があるので、チェックを入れます。
5-1. 図形を「図として保存」した場合
それでは、「図形」の場合はどうなるのでしょう。
図形を組み合わせたロゴは、このままでは別のソフトで使うことができません。
そんなときに「グループ化」して「図として保存」を利用します。
ただし、Wordでは図形を右クリックしても「図として保存」はありません。
しかし、PowerPointでは可能です1。
「図として保存」すると、いったんビットマップ画像(ただしPNG形式)に書き出されます。
「ビットマップ画像」形式のファイルには、無圧縮のBMPだけでなく、圧縮処理をしたPNGやJPEGがあります。
「BMP」は一つ一つのピクセル(画像のマス目)の色を記録しています。
そのままではデータサイズが大きくなるので、同じ色の範囲をまとめて指定したり、似た色をひとまとめにしたりすることで圧縮するのが一般的です。
このときの画質は、「図として保存」したときの解像度・サイズによって決まります。
例えば、幅18.75cmの図(グループ)を「図として保存」した場合、
18.75cm÷2.54×150ppi = 1107ピクセルになります。
反対に小さい状態 幅2.0cmで「図として保存」すると、
小さいサイズ(119ピクセル)で保存されました。
5-2. 「既定の解像度」はオプションで変更できる
ここで、解像度が150ppiなのは、PowerPointの「既定の解像度」によっています。
図として保存で作成された画像サイズは解像度と表示サイズで決まる