- 「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
- 登録商標は、製品やサービス名の一部に使うのには許可が必要ですが、非商用の一般的な文章内に使うのは問題ありません。
- ただし、登録商標は、一般名詞とは違って商標権者への配慮が必要な名前。
無用な争いを避けるためにも登録商標表記をすることが推奨されています。
デンソーウェーブは、QRコードの仕様を公開してJIS規格化を進め、一般利用できるようにしています。
一方、「QRコード」という「ブランド」は企業の権利でもあり、その保護とのバランスを取っています。
1. どうして「QRコードは登録商標」と書かれているの?
よく「QRコードは登録商標です」などと書かれていることがあるけど、これを書かないとまずいの?
「QRコード」という用語に注意が必要なのは、株式会社デンソーウェーブの登録商標だからです。
- 「二次元コード」=普通名称
- 「QRコード」=登録商標
1-1. 製品・サービス名に使うには許可が必要
「商標」は、「トレードマーク」のこと。
企業が商標権を持つのは、かんたんに言えば自社のサービス名やマークを勝手に真似されないためです。
別の企業が製品・サービス名などで「QRコード」を利用するには、商標権を持つデンソーウェーブの許諾が必要です。
実は「QR」は、「高速読み取り(Quick Response)」の意味で、このコードが画期的なものであることをアピールする製品名です1。
「QRコード」という言葉が一般に浸透したのは、デンソーウェーブの企業努力の結果とも言えます。
確かに、せっかく認知された自社の製品名が無関係の別の会社に使われていたら困るもんね。
なお、QRコード以外にも「宅急便」「ウォシュレット」「サランラップ」など、日常的に使われる言葉の中にも登録商標が多くあります。
2. 文章内で使う場合は?
ただし、「QRコード」という言葉は、かなり一般的にも知られています。
非商用の一般的な会話や文章では使われます。
むしろ、「このマークと言えば、QRコード」って認識だよね。
事実の報道や解説の目的で商標を使用する場合は、「商標の正当な使用」として認められており、原則として商標権侵害には当たりません。
ただし、商標に言及する場合は、一般名詞化している場合でも、可能な限り一般名詞と区別できるよう配慮し、正確に表記する必要があります。
また、商標が商標権者の信用を傷つけたり、商品・サービスの出所について誤認を招くような表現は避けた方がよいでしょう。
一般名詞は自由に使えるけど、「誰かの名前」には配慮が必要なんだね。
2-1. 「商用」の範囲・商標権の範囲とは?
しかし、文章には「商用」、つまり「利用者が自分の利益を得る目的で、営利目的で、利用すること」に含まれる可能性もないわけではありません。
第三者に、商標権者との関係性を誤認させるような表現は問題になることもありえます。
ただし、商標権には範囲があります。
商標権は、平たく言えば「同業他社」に同じブランドを使わせない権利だからです。
範囲外であれば、商標権の侵害にはならないはずです。
商標権とは、マークと商品・役務の組合せからなる権利です。
次の(1)又は(2)いずれかに該当するときは商標権侵害にはなりません。商標権の効力が及ぶ範囲は、マーク及び指定商品・役務が類似する範囲までです。よって、マークと商品・役務の両方が類似していると商標権侵害になる可能性が高いですが(ただし後述の(2)を除く。)、マーク又は商品・役務のどちらかが非類似であれば、商標権侵害にはなりません。
商品・役務の品質や内容等を表示するにすぎない態様で使っている場合には、商標権の効力は及びません。(商標法26条1項各号)
商標制度に関するよくある質問 | 経済産業省 特許庁
「QRコード」の場合は、【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】は、以下のようになっています。
理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,ロケット,回転変流機,調相機,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気式ワックス磨き機,電気掃除機,電気ブザー,消防艇,磁心,抵抗線,電極,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ
2-2. JIS規格による「QRコード」の定義
うーん?
「QRコード」は、デンソーウェーブの製品(プロダクト)なんだよね。
そもそも、自分で作成した2次元コードは「QRコード」とは言えないの?
実は、そうかんたんでもないのです。
コードの仕組みそのものは、特許で保護されているものの、JIS規格によって標準化されています。
デンソーウェーブはQRコードの仕様を公開し、それはJIS規格にも反映されているのです2。
「QRコード」の定義は、JIS規格でも「用語及び定義」の中に見られます。
4.8 QRコード(QR Code)
QRコード1型〜40型として識別されるシンボル(マイクロQRコードとは明確に異なる。)。5.3.3 型番参照
QRコードのシンボルの型番は,V-Eの形式で参照される。ここに,Vは型番号(1〜40)を示し,Eは誤り訂正レベル(L,M,Q及びH)を示す。6. QRコードの仕様
QRコードは,次の特性をもつマトリックス式シンボル体系である。6.3.2 シンボルの型番及び大きさ
QRコードシンボルには,1型〜40型として参照される,40種類の大きさがある。
つまり、規格に従ったシンボルは、「QRコード」と呼ぶことができます。
JIS規格の仕様には、商標に関する言及はありません。
3. リスクを避ける
理屈で言えば、指定サービス以外で使うのは問題ないはずです。
とはいえ、リスクを避ける対応が一般的になっています。
- 「二次元コード」という一般的な名称を使用する
- 登録商標であることを明記する
- デンソーウェーブに使用許可を得る
解釈によるグレーな部分ってことなのかな。
3-1. 商標文の記載で伝わる意思
株式会社デンソーウェーブは、商用利用でない場合には登録商標文を記載することを「依頼」しています。
QRコードの知的財産権について
商用利用しない場合でも、QRコードの名称を使用する場合には、登録商標文は必要ですか?登録商標文の記載をして頂きますようお願い致します。
FAQ|QRコードドットコム|株式会社デンソーウェーブ
これは「お願い」のため記載の「義務」が強制されるかどうかはさておいて、「QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です」と記載しておけば権利侵害の意図がないことを示せます。
いきなりトラブルになるのを防ぐことができます。
こっそり使っているのではなく「商標を尊重しつつ、商用利用ではないという解釈で使っていますよ」という意思表示にはなるんだね。
曖昧な場合での争いを避けるためには、お互いの配慮が大事なのかな。
「QRコード」はデンソーウェーブが完全に独占することもできたはずですが、「公共」として使えるように譲歩していると思います。
一方で、企業として自社の権利を保護する必要があり、知的財産権の複雑なバランスに上にあるわけです。
(補足)
- QRコードの”QR”は、”Quick Response”(クイックレスポンス)に由来しています。 – FAQ|QRコードドットコム|株式会社デンソーウェーブ
- 「QRコードを多くの人に使っていただきたい」という想いから、デンソーウェーブはQRコードの仕様をオープンにしています。 – QRコード規格化・標準化|QRコードドットコム|株式会社デンソーウェーブ