- Google広告では、最大入札額を広告主が決めて広告を出します。
それなら、最大入札額が高い広告だけが表示されるかというとそうでもありません。 - また、1回の広告クリックに対して広告主が決めた最大入札額が全部 Googleに支払われるわけでもありません。
- 実は、人の競りと同じように、ちゃんと競争相手より「ちょっとだけ多め」の入札になる計算方法があるのです。
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実際に人が「競り」をしているわけではないのに、どうしてオークションが成立するのかな?
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YouTube動画でも話しています。
1. 広告オークションという「ゲーム」
広告主の入札戦略、広告の品質、ユーザーの検索クエリとの関連性を複雑に分析し、それぞれの検索クエリに対して最適な広告表示をリアルタイムで提供するための計算システムです。
といっても、イメージが湧かないので、具体的に見てみましょう。
1-1. 札束だけでは勝てない
「広告オークション」は、広告スペースが表示されるたびにリアルタイムで行われています。
多くの広告主が、自分の広告を表示させるために競り合っています。
勝者が広告表示の優先権を落札し、その費用を支払います。
ただし、このゲームで重要なのは最大入札額だけではありません。
最大入札額に「品質スコア」をかけた数値をパワーとして、大きい方が勝ちます。
このパワーのことを「広告ランク」といいます。
- 広告ランク:
最大入札額 × 品質スコア
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とりあえず、最大入札額を高くするだけでは落札できないの?
それは、Google広告では、基本的にはクリックされないと広告費が発生しないからです。
つまり、どんなに最大入札額を高く設定しても、全くクリックされないような広告は一円にもならないのです。
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したがって、クリックされやすさ(品質スコア)を加味して、競り合っているのです。
2. Ready?まず各企業は広告を出す
具体的に 4つの広告主が広告入札に参加する場合、どうやって広告位置と費用が決まっていくのか見てみましょう。
まずは、準備段階。
各広告主はGoogle広告を出すために、以下の項目を決めます。
- キーワード(Keyword):
広告主がターゲットとするユーザーの検索クエリ。 - 最大入札額(Bid):
広告主がその広告がクリックされた時に支払いたい最大額。 - 広告内容:
広告の文言や内容。広告先リンクなど。
「自動車の手入れ」というキーワードで広告を出稿したい場合、このキーワードに関連する検索があった際に、広告が表示される可能性があります。
2-1. 広告内容と最大入札額を決める
たとえば、「自動車の手入れ方法」に関するページで広告が表示された4つの企業を考えます。
広告主 | 最大入札額 | 広告内容 |
---|---|---|
企業A | $4 | 自動車用洗車用具 |
企業B | $5 | 自動車関連アクセサリー |
企業C | $6 | 自動車用塗装保護剤 |
企業D | $8 | 自動車修理サービス |
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企業Dが一番高い最大入札額を提示しているんだね。
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最大入札額は、広告から誘導されてきた人が商品を買う確率 × 商品の価格 で決めることが多いです。
高額商品ほど広告費もかけやすいので。
3. Go!利用者が広告を目にする直前
ユーザーがGoogleで検索を行った瞬間や、Googleのパートナーサイトでページを読み込むと、広告オークションが開始されます。
そこにマッチするキーワードを設定した広告の間で、表示位置を巡る「競り」が始まるのです。
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というと、各企業の「競り人ロボット」が競り合いをするようにイメージしますが、実際には すべてGoogleが計算して一瞬で結果が出ます。
3-1. 品質スコアを決める
Google広告の各オークションが行われると、Googleはまず各広告の「品質スコア」を決めます。
「品質スコア」は毎回変動する数値で、簡単に言えば「広告がどれぐらいクリックされそうか」という予測を表しています。
ページのコンテンツと高い関連性を持ち、ユーザーが実際に関心を持ちそうな広告ほど、クリックされる可能性が高く、結果として品質スコアが向上します。
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基本的には、Google広告はクリックされたときに広告費が発生するので、Googleとしてもクリックされる広告を表示したいのです。
品質スコアは、以下のようなさまざまな要素から決まります。
- 広告のクリックスルーレート(CTR:押された比率)
- キーワードの関連性
- ランディングページと関連性・品質
- 広告テキストの関連性
- Google広告アカウントのこれまでの実績
ウェブサイト上に表示される広告(Googleディスプレイネットワークなど)では、以下も重要です。
- そのウェブサイトのコンテンツとの関連性
- 広告がどれだけ視覚的に魅力的であるか
自動車の手入れについての情報ページに広告スペースがあった場合、洗車用具やクリーニング製品などは直接的に関連しています。ユーザーが関心を持ちやすくクリック率が高いので、品質スコアの高い広告になります。
反対に、スパム広告のようなものは、通常、ユーザーの検索意図や期待に合致しないため、品質スコアが低くなりがちです。
Googleは、以下の広告の品質スコアを次のように決めたとします。
広告主 | 最大入札額 | 広告内容 | 品質スコア |
---|---|---|---|
企業A | $4 | 自動車用洗車用具 | 10 |
企業B | $5 | 自動車関連アクセサリー | 7 |
企業C | $6 | 自動車用塗装保護剤 | 6 |
企業D | $8 | 自動車修理サービス | 3 |
例では、自動車用洗車用具の広告がもっともページに関連していると評価したわけです。
意外にも修理サービスの評価が低いです。
これは、ページ情報に関連性があっても、ユーザーが求める価格帯とは異なるなどクリックされにくいものは、品質スコアが低くなることがあるからです。
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ゲームで言えば、その回の「場の風」みたいなもんだね。
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実際の数値ではありません。
あくまで比較のためのイメージです。
3-2. 広告ランクの計算
品質スコアが決まれば、後は計算によって勝者が決まります。
広告が検索結果ページで表示される順位を決めるには、「広告ランク」を計算します。
- 広告ランク(Ad Rank)の計算:
入札額 × 品質スコア
広告の表示位置は、広告ランクが高い広告ほど上位に表示されます。
広告主 | 最大入札額 | 品質スコア | 広告ランク |
---|---|---|---|
企業A | $4 | 10 | 10 × $4 = $40 |
企業B | $5 | 7 | 7 × $5 = $35 |
企業C | $6 | 6 | 6 × $6 = $36 |
企業D | $8 | 3 | 3 × $8 = $24 |
この例では、企業Aが最も高いランクになります。
次に企業C、企業B、企業Dの順です。
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これがページで表示される順位を決定します。
4. Result!クリックごとの費用(CPC)の計算
広告の表示位置が決まると、あとは費用の計算です。
広告がクリックされると、広告主はGoogleに広告費を支払う必要があります。
「広告費(CPC:Cost Per Click、クリック単価)」は、広告を出させるために費やした「パワー」が大きいほど高くなります。
つまり、広告ランクが高いほど大きくなりますが、そこから品質スコアを割って、金額に逆算します。
ただし、自分の広告ランクを品質スコアを割れば、つねに最大入札額になってしまいます。
そこで、広告主が実際に支払う金額は、競争相手を考慮して決めます。
1つ下の広告のランクにちょっと上乗せして落札したものとして計算するのです。
広告ランク直下 ÷ 品質スコア + ε
※εは、ちょっと上乗せ分(たとえば、$0.01)です。
つまり、クリックごとの費用は、直下のランクの広告主の広告ランクを自社の品質スコアで割り、$0.01を足して計算されます。
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これで広告を落札しても、つねに最大入札額にならなくなりました。
通常、クリック単価は事前に指定した最大入札額より少なくなります。
4つの企業広告を広告ランク順に並べ替えて、クリック単価を計算してみます。
広告主 | 最大入札額 | 品質スコア | 広告ランク | クリック単価 |
---|---|---|---|---|
企業A | $4 | 10 | 10 × $4 = $40 | $36 / 10 + $0.01 = $3.61 |
企業C | $6 | 6 | 6 × $6 = $36 | $35 / 6 + $0.01 = $5.84 |
企業B | $5 | 7 | 7 × $5 = $35 | $24 / 7 + $0.01 = $3.43 |
企業D | $8 | 3 | 3 × $8 = $24 | N/A < $8 |
各広告主のクリック単価を比べてみると、2つのことがわかります。
- 品質スコアが低いと(利用者がクリックしようと思えない広告だと)、より多くの費用を支払っても上位に表示されない。
- ほかの広告との広告ランクの差が小さいほど(競合する広告数が多いほど)、最大入札額に近いコストになる。
企業Aは上位に表示されているのに低いCPCで済んでいます。
一方で、企業Cは、より多くの費用を支払っているのに上位に表示されませんでした。
これは、各広告の関連度を評価しているからです。
別の検索キーワードや表示ページであれば変わってきます。
企業Cと企業Bは、広告ランクが競り合っているので、企業Cは最大入札額に近いコストになっています。
一方、企業Bは、企業Dに余裕を持って競り勝っているので、実際のクリック単価は最大入札額よりも割安になりました。
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もちろん、ここでの計算はかなり簡略化しています。
実際のGoogle広告の計算方法はより複雑です。
5. 広告の最適化アルゴリズム(機械学習)
広告主の入札戦略、広告の品質、ユーザーの検索クエリとの関連性を複雑に分析し、それぞれの検索クエリに対して最適な広告表示をリアルタイムで提供するための計算システムです。
つまり、Google広告のオークションアルゴリズムは、各広告のパフォーマンスメトリクスと入札戦略に基づいて、最適な広告表示順位をリアルタイムで動的に決定する最適化プロセスです。
膨大な量のデータを迅速に処理し、複雑な数学的計算を行って最終的な決定を下しています。
広告の品質スコアを調整するプロセスでは、機械学習の技術も活用しています。
過去のデータからユーザーの行動パターンを予測することで、最も関連性の高い広告が表示されるように努めているのです。
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広告全体の質を決めているのは、「品質スコア」の計算プロセスです。
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最近、変な広告が増えた気がするのは、このプロセスの機械学習で「過学習」が起きているのかな?
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