- タッチタイピングは、基本となるホームポジションから段階的に練習を進めると効率的に上達します。
- 指先の感覚を大切にし、力を抜いて自然な姿勢で打つことが、速く正確なタイピングの習得につながります。
- 初めてキーボードに触る人が、スムーズな入力(KPM 200)に到達するのを目指していきます。
1. はじめに(初めての人向け)
今日は「タイピングの基本」についてお話しします。
特に、一本指でキーボードを打っている方が、5本の指をスムーズに使えるようになるために、シンプルな練習方法をご紹介します。
まずは、1分間に100文字ぐらい(約200回のキー入力)を目指します。
1-1. 音声入力があってもタイピングは大事
最近は音声入力技術が発達し、話すだけでも文字を入力できます。
人工知能(AI)に話しかけて、すぐに応答を得られるようになっています。
しかし、そのような状況でもキーボード入力の重要性は変わっていません。
その理由として、まず声を出せない場所が多いことが挙げられます。
パソコン作業をする場面では、むしろ声を出せない状況の方が一般的です。
もっと大事なのは、話し言葉と書き言葉には大きな違いがあること。
音声入力をしてみると実感するのが、文章に考えをまとめようとするとき、声に出そうとすると難しいことです。
「文章を話す」のは「文章を書く」のに比べて、格段に難しいです。
慣れもあると思いますが、タイピングは文字を書くことに似ています。
入力した文字を見ることで、続きの文章が考えやすくなります。
あと、パソコンならでは理由もあります。
調べ物などでの文は、全部に自分で入力するわけではありません。
コピーや貼り付けも利用するからです。
そんなときの文章の修正では、音声入力よりもキーボード入力の方が速いです。
1-2. タッチタイピングの習得について
キーボードを見ずに入力する「タッチタイピング」は、コツをつかめば意外とかんたんです。
考え方は10分ほどで理解できます。
あとは「3日間」ほど練習すれば、すぐに成果が現れます。
もちろん、「ぶっ続け」に練習するのは大変。
3日分の練習を1週間かけて行ったり、土日を使って1か月かけて取り組んだりしても大丈夫。
あるいは毎日コツコツ5分ずつ練習を続けたってよいです。
タイピングが嫌にならない程度に、新鮮な気持ちで取り組めるペースを維持しましょう。
2. ホームポジションの基本
タッチタイピングの基本となるのが「ホームポジション」です。
キーボードは真ん中の3段が主要な部分で、中でも中段が基準になります。
左手の小指を「A」キーに置き、「S」「D」と順番に指を並べていくと、人差し指が「F」キーの位置になります。
キーを2つ分空けて、右手の人差し指を「J」キーに置くと、「K」「L」と進んで小指は「;(セミコロン)」の位置になります。
このキーボードのFとJのキーには、人差し指の位置を確認するための突起があります。
まずは、ホームポジションでそのまま打てる8つのキーだけを練習します。
8個のキーだけならすぐに覚えられます。
手元を見ずにキーの位置と指を結びつけられるようになれば、次の段階に進んで大丈夫です。
目安として、60個のキーを30秒程度で打てるようになれば合格です。
これは1分間に120回のキー入力(KPM 120)に相当し、まずまずの速さ。
ちなみに、この段階で練習期間をかける場合、ふだんのキーボード入力では今まで通りの打ち方でも構いません。
あくまで薬指や小指を動かすためのトレーニングとして取り組みましょう。
指の限界に挑戦してもよいですが、スムーズに指を動くようになれば、このトレーニングはバッチリです。
2-1. 指の使い方と姿勢
速さより大事なのは手の形。
「猫の手」や「軽くたまごを握る」ような形が理想的です。
指を伸ばしてしまうと、指先の位置はバラバラになってしまいます。
そこで、少し手のひらを前に出して指を曲げるようにすると、キーの並びに指の位置がそろいます。
また、キーを押すときは指先を少し立てて「腹」の部分を使います。
あまり指紋の部分をペタペタ打つと疲れてしまいます。
キーを押すときは、ピアノを弾くように、指を少し上げて構いません。
速く打とうとすると力を入れがちですが、力んでしまうのは逆効果。
実際には力を抜いた方が速く打てます。
特に、ノートパソコンの場合、手のひらはパソコンに軽く載せ、腕の重みをパソコンに預ける感じにします。
手首を上げて固定したままだと疲れやすいです。
ただし、これらのコツは「絶対的なルール」ではありません。
一人ひとり体は違うので、自分に合った打ち方を見つけていくことが大切です。
「こうしなきゃ」と頭で考えるよりも、少しずつ指の曲げ具合や手首の向きなどを変えながら、自分の指先の感覚に意識を向けてみてください。
これはスポーツや武道などの「フォーム」とも似ている部分がありますね。
「急がば回れ」。
タイピングの初期の上達には、速さだけでなく、指先の感覚や手のひらの感覚、力の入れ具合にも注意を払うことが大切です。
キーを押したときの音や、自分の指や体と向き合う感覚を楽しんでいきましょう。
3. あいうえおキー・上段キーの練習
ホームポジションを習得したら、次は「あいうえお(AIUEO)」の入力を練習します。
ローマ字入力の多くの文字は「AIUEO」との組み合わせで入力されます。
例えば「かきくけこ」は「K」と「AIUEO」を組み合わせて入力し、
「さしすせそ」は「S」と「AIUEO」を組み合わせます。
つまり、AIUEOがスムーズなら、それだけで入力時間は半分に短縮できます。
しかも、これらのキーは比較的見つけやすい位置にあります。
「あ(A)」のキーはホームポジションの中段にありますが、
「い」「う」「お」は右手の上の段、「え」は左手の上の段にあります。
指を少し伸ばすだけで打てる位置にあるのです。
3-1. 打ちやすい上段のキーと単語の練習
次にホームポジションから打ちやすい上段のキーを練習します。
この段階で、ホームポジションの8個と新たに6個のキー、合計14個の位置を覚えたことになります。
ここまでのキーだけでも、ある程度のローマ字入力が可能です。
実際に入力しやすい単語に限って、タッチタイピングで入力してみてください。
もうだいぶカッコよく打てるようになっているはずです。
アルファベットは全部で26文字なので、約半分を習得したことになりますね。
ただし、アルファベットの小文字が苦手な場合、本格的なローマ字入力に進む前に「b」や「d」など似ている小文字についても整理しておきましょう。
4. 内側・外側のキーの練習
あとは、使えるキーを増やしていきます。
まずは、中段と上段の残りのキーです。
人差し指を内側に伸ばして打つキーと、小指で打つキーを練習します。
「Y」などの人差し指を伸ばす中央付近のキーは、左右どちらの手で打つべきか迷うことが多いです。
これは、キーボードはキーが斜めに配置されていることにも注意が必要です。
そのため特に左手は、右手に比べて手首を少し曲げる形になっています。
キーと左右の指の基本対応を覚えておきましょう。
とはいえ、手首に負担がかからないよう、あまり強く曲げすぎないようにしましょう。
4-1. 下段キーの練習と伸ばし棒の入力
下段のキーの難しさは、手のひらに隠れて見えにくいこと。
いちいち手をどかしてキーを探していては、スムーズに受けません。
指を少し握るような形にすると、下段のキーを押しやすくなります。
下段には約10個のキーがありますが、まずは「N」「M」「B」「Z」だけでも覚えておきましょう。
ローマ字入力で最後に残る「伸ばし棒」(「ー」)は、上の段のさらに上にあります。
ホームポジションの基本的な運指では小指の担当ですが、かなり遠いので薬指を使う人も多いです。
- 小指で打つ場合は、手首全体を少し奥に持ち上げるようなイメージで、
- 薬指を使う場合は、手のひら全体を広げるような形で打ちます。
自分に合った方法を選んでください。
ここまでで、ローマ字入力に必要なキーの位置を覚えました。
右側にある記号類は日本語の文中には少ないので、その都度探しても大丈夫。
必ずしもホームポジションにこだわって小指で打つ必要もありません。
5. 単語練習のコツは「頭の切り替え」
タイピングの練習で大切なのは、思い込みを捨て、力を抜くことです。
この考え方は、パソコンやスマートフォンの操作に限らず、様々な学習に役立ちます。
単語入力の練習では以下のような練習を適度に切り替えるのとよいです。
- 速く打つ練習
- 丁寧に打つ練習
- 速すぎず、遅すぎず、同じテンポを維持して練習
- 一つの単語を決めて、その単語で最高速度を練習する
一つの方法にこだわらず、いろいろな練習方法を試していると、自然と基準となる入力速度が上がっていきます。
いつの間にか KPM 200 ぐらいになっているはずです。
「走り込み」みたいな感じだね。
さらに速くなるためには、ホームポジションを少し崩す「最適化」など、別の工夫が必要になってきますが、それはより上級者向けの技術となります。
自動車の運転で例えると、ここまでの内容は普通免許を取得するための基本操作。
レーシングドライバーの技術は、また違った練習が必要です。
5-1. 誰でもはじめは「もどかしい」
実は、私は現在、通常のローマ字入力ではなく、「親指シフトかな入力(キーボードの親指で文字の種類を切り替える入力方式)」を使用しています。
約10年前に思い立って、基礎からタイピングを学び直したのですが、とても苦労しました。
それまでローマ字入力で速く打てる状態から、一気にたどたどしくしか打てない状態に戻ったので、非常に「もどかしい経験」でした。
この経験は、初めてタイピングを学ぶ方々の気持ちを理解する良いきっかけとなりました。
最初のうちは「従来の方法の方が楽だった」と感じることも多く、挫折しそうになりました。
ただ、練習を重ねるうちに、徐々に頭と指が新しい方式に適応し、スムーズに入力できるようになっていきました。
人間の脳の素晴らしい点は、この適応が比較的短期間で行われることです。
これは、ちょっと怪我のあとの「リハビリ」にも似たところがあります。
最初は単調で苦しいトレーニングでしたが、徐々に可動範囲が広がっていくことに嬉しさがありました。