- Evernoteは「クラウド保存のデジタルノート」という新しい価値観を示し、大きな注目を集めました。
- しかし、大手企業の参入や無料プランの制限により、次第に優位性を失っていきました。
- 現在はBoseに買収され再建を図っていますが、フリーミアムモデルの経営の難しさを示す事例となっています。
Evernoteの意義は、「クラウド保存のデジタルノート」という価値観を世に示したことです。
しかし、MicrosoftやApple、Googleなどの競合の参入で、徐々に優位性を失ってしまいました。
1. Evernoteとは?
「Evernote」は、デジタルメモやノートを作成・整理・共有するためのクラウドベースのアプリケーションです。
2008年に登場し、多くの人の注目を集めました。
その理由はいくつかあります。
本などでも紹介されていたし、めちゃくちゃ「イケてる」サービスだったよね。
振り返ってみると、2010年代の前後がクラウドの黎明期なんですね。
当時はパソコンを複数持つようになって、情報が重複しないように管理するのが大変だったんですよね。
わざわざ自分のGmail宛にメールを送って、情報管理していたりする人もいました。
それに特化したのが Evernoteという印象です。
「自分宛てのメールをノートにする」という発想は、LINE Keepメモにも通じますね。
1-1. コンセプト
まず、Evernoteは新しい考え方を持っていました。
「第二の脳」という言葉を使い、頭の中のメモをデジタルで管理できるツールだと説明しました。
とにかくすべての情報をEvernoteに入れれば、「永遠に保持できる」と信じられていました。
1-2. クラウド
次に、Evernoteはどこでも使えるのが特徴でした。
パソコンでもスマートフォンでも、インターネットを使ってどこからでもアクセスできました。
これは当時としては珍しいことでした。
1-3. マルチモーダル
さらに、Evernoteはたくさんのことができました。
文字を書くだけでなく、写真や音声も保存できました。
また、紙の文字を読み取る機能もありました。
1-4. フリーミアム
最後に、Evernoteは賢い料金の仕組みを使いました。
基本的な使い方は無料で、もっと便利な機能を使いたい人はお金を払う仕組みです。
これにより、多くの人が使い始めました。
2. フリーミアムモデルの経営の難しさ
フリーミアムモデルは、多くのユーザーを惹きつける魅力的な戦略です。
しかし、新規ユーザーの増加が鈍ると、企業は収益を確保するための難しい選択に直面します。
最初の段階では、企業は無料サービスを通じて急速にユーザー基盤を拡大します。
この時期は、有料ユーザーの獲得よりも、全体的なユーザー数の増加に重点を置きます。
しかし、時間が経つにつれて、Evernoteは問題に直面しました。
一番大きな問題は、拡大の鈍化です。
2-1. 大企業の参入
コンセプトが「新しい」ものであっても、技術的に難しくなければ、大企業の参入を許してしまいます。
例えば、MicrosoftやApple、Googleなどの大きな会社が似たようなサービスを始めました。
これらの会社は既に多くのユーザーを持っていたので、Evernoteにとって大きな競争相手になりました。
- OneNote
Microsoftが提供するデジタルノートアプリ。
Office製品との連携が強み。
無料で使えるため、多くのユーザーに利用されている。 - iCloudメモ
Appleデバイス用の標準メモアプリ。
iCloudとの連携が特徴で、iPhoneやMacユーザーに人気がある。 - Google Keep
Googleが提供するシンプルなメモアプリ。
他のGoogleサービスとの連携が便利です。
Googleアカウントがあれば無料で使える。
そのほかにも同様のサービスがあります。
- Notion
最近注目を集めているオールインワンの生産性ツール。
ノート、データベース、プロジェクト管理など幅広い機能を持っている。 - Simplenote
テキストベースのシンプルなノートアプリ。
軽量で高速な同期が特徴で、複数のプラットフォームで利用できる。 - Obsidian
ローカルファーストのMarkdownエディター。
個人の知識管理に特化しており、ノート間のリンク機能が強力。
他の会社が新しい機能を次々と出す中、Evernoteの新しさが薄れていきました。
うーん、大企業の横取りみたいな感じだけど……
2-2. 無料ユーザーをどうするか?
ユーザー増加が鈍化すると、企業は投資家や株主からの圧力を受け、収益性の向上を求められます。
Evernoteは料金システムを変更しました。
無料で使える範囲を狭めたり、有料プランの値段を上げたりしました。
私もEvernoteを使ってメモを保存していましたが、ログインできるデバイス数の制限ができた段階で別のサービス(Google Keep)に移行しました。
「複数のパソコンでもスマホでもどこからでもメモができる」という前提が崩れてしまったからです。
実質的には「無料プランは終わった」って考えた方がよいね。
「体験版」的な扱いになった、と。
似たようなジレンマは ChatWorkでもあるよね。
生成AIのサービスも似たような道をたどるのかな。
もちろん、有料プランの魅力を高めるために、Evernoteは新しい機能をどんどん追加しました。
しかし、かえって Evernoteの持つ「シンプルさ」が失われてしまった側面があります。
そう考えると、フリープランのままで収益化できている大手テックって驚異的だね。
「膨大な個人情報」を集めて広告業での活用するのって、そんなに儲かるのかな?
Evernoteの会社運営でも暗雲が立ち込めます。
ユーザーの情報が漏れるなどのセキュリティの問題や、創業者が会社を去るなど運営に対する不安が増し、以前ほど人気がなくなってしまいました。
今でもEvernoteは継続していますが、昔ほど勢いはありません。
ただ、2020年にはBoseによる買収があり、再建に向けてがんばっています。