好奇心は猫をも殺す。興味本位で下手に首を突っ込むと、9つの命をもつ猫だって身を滅ぼす。まして、人間なんてひとたまりもない。
それでも調査を続けます。
前回、Windows Movie Maker(MovieZilla) をインストールしてみて、気づいたのが「topwin-movie-maker.com」というアドレスでした。
今回はこのサイトを調べてみて、海賊版ソフトの微妙な改ざん点を見つけることができましたのでレポートします。
1. TopWinとの出会い
おさらいになりますが、MovieZillaのインストーラーの詳細で「TopWin Software Limited」という名前を見つけました。

また、”Windows Movie Maker” のバージョン情報にも、「topwin-movie-maker.com」という単語がありました。

ということで、そのウェブサイトを訪問してみました。
1-1. TopWinのトップページ
日本語ページはこんな感じで、若干怪しい文章が出迎えてくれます。

Windows Movie Makerを利用して、写真とビデオを簡単に流暢的な動画に編集できます。特別な効果、カットシーン、BGMと音声および字幕を加えます。これらが動画編集へ助けてあげて、他人にあなたのストリーを教えましょう。友達と家族に思い切りビームーをシェアしましょう。
Windows Movie Maker

この誤植はちょっと不思議で、機械翻訳だからというわけではなさそうなんですよね。
1-2. MicrosoftとTopWinの関係は「ない!」
実はトップページにマイクロソフト社との関係が明記されています。
ヒント:わが社はマイクロソフト社と関係がありません。マイクロソフト社のホームページからダウンロードできますが、第三者のカスタマイズ化の効果、動画、音楽などがありません。 こちらへ
https://www.topwin-movie-maker.com/jp/
日本語はちょっと不安なので、英語版で意味を確認します。
Note: We are not affiliated with Microsoft. The windows movie maker software is also available on microsoft official site click here
https://www.topwin-movie-maker.com/
“affiliated with” は、「〜の系列である、〜に加盟・提携している」という意味です。
したがって、マイクロソフト社とTopWinに提携関係はありません。
では、なんで再配布できるのか。
2. ダウンロードにある2種類のインストーラー
このサイトでは、2種類の “Windows Movie Maker” を配布していました。

「2020(new-multi.exe)」と「Classic(free-version.exe)」です。

2種類並べるのは何かのセオリーなんでしょうか?
2-1. ダウンロードしたインストーラーのファイル情報を確認する
例によって、動作確認用パソコンでダウンロードしました。

ファイルの詳細情報を比較したのがこちら。

右側が2020版です。これはMovieZillaでダウンロードしたファイルと同じようです。
左側はClassic版で、製品バージョンや著作権情報が削除されています。サイズも78.0MBと大きいです。
3. “Windows Movie Maker Classic” をインストールしてみる
緊張しながら Classic版をインストールしてみます。

使用許諾契約書が表示されました。
一番最後を見てみると、”Windows Movie Maker” が主体になっています。

3-1. 起動してみるとやっぱり海賊版だった
インストールされたアイコンをみてみましょう。


ん?
起動してみます。

懐かしい「Windows Live Essentials 2011」の使用規約が表示されました。マイクロソフトのままです。

こういう場合の「承諾」は、やはりマイクロソフトと契約したことになるんだろうか。
画面を確認すると、画面上部には「Windows Live ムービーメーカー」と表記されています。

4. バージョン情報に見つけた些細な違い
いったい自分は何をインストールしたのか、おもむろにバージョン情報を確認します。

Windows Movie Maker
バージョン 2011 (ビルド 15.4.3502.0922)
なるほど、これは完全な「海賊版」でした。
Windows Movie Maker Classicのはずが、
Windows Live Movie Maker 2011がインストールされた
ただ、気になるのがバージョン情報の「Windows Movie Maker」の表記です。本来、「Windows Live Movie Maker」のはずなのです。
古いWindows 7パソコンを引っ張り出して、Windows Live Movie Makerのバージョン情報を見比べてみます。

Windows Live(TM) Movie Maker
バージョン 2011(ビルド 15.4.3502.0922)

やっぱり!
この微妙な違いは実は重要で、「全くそのままではない」ということがわかるのです。内部情報が改ざんされている。

同時にこれができるということは、コンピュータ・ウイルスを付加することも簡単にできてしまうわけです。
4-1. 一応 Windows セキュリティでスキャンした
もしかしたら、ウイルスが検出されるかも。ということで、Windows セキュリティでクイックスキャンをしてみます。

結果は検出されず。
もちろん、だからといって安全とは言えません。
4-2. Windows Movie Maker Free Version のアンインストール
怖いので、アンインストールします。

アンインストールできました。


これ、悪意のあるソフトだと、本当に「正常に削除された」かは、確証がないんですよね。
5. 「Movie Maker」で検索すると…
Googleで「Movie Maker」で検索したところ、上位3つはこのようになっていました(2021年1月5日現在)。

検索結果から目にするダウンロード先は、topwinとsoftpediaが大半のようです。
5-1. Softpedia? Softonic?
Softpediaはルーマニアに拠点があるサイトです。ソフトウェアのレビューと二次配布が主な内容になっています。かつてはスペインに拠点があったSoftonicが移行したサイトです。
Postal mail: Str. Putul lui Zamfir nr. 60-62, Sector 1, Bucharest 011684, Romania
https://www.softpedia.com/user/copyright_information.shtml

偽ソフトで直接 利益を得るというよりは、海賊版ソフトで集客して、広告収益や寄付で運営しているようです。
ただし、本物も偽物を集まってしまうため、安全性の保証はありません。

ただし、ソフトの掲載にあたっては公開元に「登録した」ことをメールで通知しているようです。
インターネットは、どこに連れて行かれるかわからない。
知らないウェブサイトでは、まず疑う。

わたしは無料のソフトを利用するときは、なるべくオープンソースソフトウェアを利用しています。ちょっと英語が多くて大変なこともありますが。
こちらもどうぞ。


