- Braveは広告をブロックするウェブブラウザです。
- ユーザーは広告を見ることで仮想通貨BATを獲得できます。
- Braveは広告主、ユーザー、クリエイターが公平に利益を得られる新しいインターネット広告の仕組みを目指しています。
1. 広告ブロックブラウザ「Brave」
インターネットを使う時、広告がたくさん出てきて困ることがあります。
そんな不満に対応するブラウザとして「Brave」があります。
「Brave」は、Brave Software, Inc.1の開発するインターネットブラウザです。
広告を自動的に消してくれるだけでなく、新しい「お金を稼ぐ仕組み(エコシステム)」も提供していることが特徴です。
広告を制御することで、インターネットを取り巻く環境を大きく変えることを目指しているようです。
1-1. しつこいネット広告とBraveの成長
ウェブブラウザとして、Braveを使う人が増えています2。
この成長の背景には、昨今インターネットを閲覧しているとしつこいネット広告が多く、多くの人がうんざりしていることがあります。
また、どんなウェブサイトを見たかなどの情報が広告表示のために集められていて、プライバシー上の懸念も増えています。
2. Braveの広告エコシステム
Braveの急成長のもう一つの要因が「仮想通貨3」です。
広告をブロックすると、経済的利益は生まれなくなります。
インターネット上での無料コンテンツ・広告・購買行動のサイクルが回らないからです。
インターネットでは無料でニュースやエンタメ、ゲームなどを享受できます。
これは、商品を宣伝・販売する営利企業が「スポンサー」になっているからです。
とはいえ、その広告がしつこすぎでサイクル全体が劣化しているのが現状だよね。
2-1. Brave Rewardsによる広告表示
そこで、Braveが考えた新しい方法は、ユーザーが自発的に広告を見たくなる仕組みを作ることです。
「広告ブロック」を謳っているのに、結局、広告を見せるの?
でも、わざわざ好き好んで広告なんて見るかな。
Braveの考えた仕組みは、広告を見たユーザーに「お金のようなもの」を渡すことです。
それが、「Brave Rewards」です4。
この機能を有効化すると、ブラウザ起動時のホーム画面や通知として広告が表示されるようになります5。
ユーザーは広告を見ることで仮想通貨 BATを獲得でき、クリエイターへの寄付や自身での保有に使用できます。
BATを受け取るには、仮想通貨取引所の口座を開設して、連携しておく必要があります。
2-2. BAT(Basic Attention Token)の使い道
「BAT」は、主にBrave内で流通し、
2024年8月現在の市場価格は 1BAT=約24円 でした。
「Basic Attention Token」の略で、イーサリアムブロックチェーン上で動作する仮想通貨です。
けっこう変動があるんだね。
それしても Braveの中でしか使えないのに、どうして市場価格がつくの?
それは、BATを使いたいと考える企業がいるからです。
BATには主に5つの使い方があります。
- 広告を見た人への報酬:
Braveで広告を見るとお礼としてもらえる - 広告を出す時の支払い:
Braveで広告を出したい会社が広告費を払うのに使う - 市場で売買する:
BATを扱う仮想通貨取引所で売買する - 特別なサービスの購入:
BraveのVPNなどの特別なサービスに支払う - 好きなウェブサイトへの寄付:
面白いウェブサイトや動画を作った人にお礼として送る
特に「Braveユーザーに製品の広告を出したい」と考える企業が、BATを購入する下支えになっています。
2-3. 広告を通してBATは回る
ユーザーへの報酬の原資は、Braveの広告収入です。
広告主が支払った広告費の 70% がユーザーにBATとして還元される仕組みになっています。
他方、広告主はBraveで広告を流すには BAT が必要です。
これを市場から調達するので、市場価格が付くのです6。
ユーザー的には、企業の広告を見てBATをもらったら、それを市場で企業に買ってもらって換金する感じなんだね。
BATそのものの価格上昇を見込んで「トレード」する人の存在もあると思います。
3. アテンションを「換金」する仕組み
BATトークンの意味は、Braveの収益化だけではありません。
もっと重要な目的は、インターネット広告の仕組みを根本から変えることです。
従来の広告モデルでは、ユーザー、広告主、クリエイターに対して、プラットフォーム企業に利益が集中しやすい構造です。
ユーザーの個人情報が知らないうちに収集され、広告主やプラットフォーム企業を利用していました。
Braveは、ユーザー、広告主、クリエイターの全てが公平に利益を得られる環境を目指しています。
- ユーザーが自分の「注意(アテンション)」を「商品」として販売できる
- プライバシーを守りながら、効果的な広告配信ができる
インターネットにおける価値の流れ方そのものを変えようとしているんだね。
この方法は、広告主やコンテンツ制作者にとってもメリットがあるかもしれません。
なぜなら、興味のある人だけが広告を見るので、効果的だからです。
3-1. クリエイターへの支援(投げ銭)
また、コンテンツ制作者にも直接お金を渡す手段が用意されています。
インターネット上の多様なコンテンツの発展を促進することを目指し、気に入ったウェブサイトや創作者に簡単に「投げ銭(チップ)」ができる仕組みも提供しています。
プライバシー保護、公平な報酬分配、コンテンツ制作支援、そして分散型経済システムの実現など、複数の目的が組み合わさっているのです。
3-2. 投げ銭を生む「しかけ」(自動支援)
わざわざ広告を見て「投げ銭」する人って、そんなにいるのかなぁ?
Braveは、「ユーザーがクリエイターを支援することでより良質なコンテンツが生まれる」という考えに基づいて、コンテンツへの対価を払う文化を醸成しようとしています。
しかし、従来の広告ネットワークと比較すると、クリエイターへの報酬の流れは不確実な面があります。
そこでユーザーの自発的な寄付に頼らずともクリエイターに報酬を分配できるように、Braveには「自動支援(Auto-Contribute)」という機能があります7。
Brave Rewardsの設定で月間予算を設定し、一覧に追加されたサイトに自動的にBATが送られます4。
4. Braveは拡大し続けられるのか?
ところが、最近 Brave Softwareの経営に陰りも見えています。
2023年11月、Braveは従業員の約16%にあたる約40人の従業員を解雇しました8。
これは、Braveにとって初めての大規模なリストラとなりました。
2022年から2023年にかけては、経済の不確実性や投資環境の変化を背景に、Brave以外でも多くの大手テック企業が大規模なリストラを実施しています。
4-1. ユーザー数の拡大ペースの鈍化
Braveは4年連続でユーザー数を倍増させてきましたが、このペースを維持し続けることは難しくなる可能性があります。
ユーザー数が増えるほど、新規ユーザーの獲得が難しくなるためです。
例えば、2021年末の月間アクティブユーザー数は約5000万人でしたが、これを倍増させるには1年で新たに5000万人を獲得する必要があります。
市場が飽和してくると、このような急激な成長を続けることは困難になるでしょう。
「ねずみ講」の限界みたいな話だね。
4-2. BAT価値の変動と停滞リスク
Braveの広告モデルとBATの価値は、ユーザーが自主的に広告を閲覧することで成り立っています。
しかし、ユーザーが広告閲覧に飽きたり、報酬が十分でないと感じたりした場合、広告の効果が低下する可能性があります。
また、広告主にとって十分な効果が得られないと判断された場合、広告出稿が減少する恐れもあります。
また、ユーザーが広告を見るモチベーションを支えるのは、BATの価値です。
仮想通貨の価値は変動が大きく、BATの価値が「期待外れ」だとユーザー離れにつながる可能性があります。
BATの価格が上昇する期待感があるときは広告が視聴されるけど、それが冷めると「ただの広告ブロックブラウザ」になってお金の循環が止まってしまうのかー。
いったん負のループに陥ると、ユーザー離れと価値下落に歯止めがかからない構造になっています。
そうなると「ただの広告ブロックブラウザ」としてのBraveの開発を継続することも難しくなってしまうかもしれません。
(補足)
- サンフランシスコにある米国企業 – Brave について | Brave
- 2021年の終わりには、月に5000万人以上の人が使うようになりました – ウェブブラウザ「Brave」のインストール数が急増、Appleがデジタル市場法準拠のためブラウザ選択画面を追加した影響か – GIGAZINE (2024-03-14)
- 個人的には「仮想通貨」より「暗号通貨」という方が実態に近いと思いますが、ここではわかりやすい用語を採用しています。
- [デスクトップ]Brave Rewardsの開始方法と各種設定について – Brave Help Center
- BraveでBATの貯め方は?【失敗しない3つの設定】 | かそわか
- 広告主が法定通貨で広告費を払った場合は、BraveがBATを調達することになる。BATの発行総額には上限があるのでやはり市場から買い戻す必要がある。
- Brave Rewardsとは?特徴や仕組み、設定方法を徹底解説! | ibu blog
- 広告ブロッカー標準搭載のブラウザ「Brave」が従業員の14%相当を解雇 – GIGAZINE (2024-08-29)