[Chrome] ハードウェアアクセラレーションとHDCP【GPUとコピーガード】

「Chrome（PC版）のハードウェアアクセラレーションをオフにすると、動画サイトの画面録画ができる」という情報を見ましたが、どうしてなのですか？また、それはよいのでしょうか？

「ハードウェアアクセラレーション」は、映像の描画をどの段階で処理するのかを選択しています。

確かに、技術的にはハードウェアアクセラレーションをオフにすると、暗号化された映像もChromeブラウザ内で復号・描画されるので、画面録画できるようになってしまいます。

[Chrome] ハードウェアアクセラレーションとHDCP【GPUとコピーガード】

技術的に「できる」ことと、法律的に「やってよい」ことを区別しないとね。

1. Chromeのハードウェアアクセラレーションの設定

PC版の Chrome には、「ハードウェアアクセラレーション」のオン／オフ設定があります。

Chrome バージョン: 109.0.5414.87（Official Build）（x86_64）
macOS：13.0.1

設定の「システム」を開くと、「ハードウェアアクセラレーションが使用可能な場合は使用する」があります。

Windows版でも、macOS版でもありました。

通常は有効になっています。
オフにするには、Chromeの再起動が必要です。

目次に戻る

1-1. ハードウェア・アクセラレーションのメリット・デメリット

「ハードウェア・アクセラレーション」は、CPUの映像関連の処理を GPU にさせて、パフォーマンスを向上させる機能です。「GPUアクセラレーション」とも言います。

メリットは、CPUの処理が軽減されて、動作が速くなることです。
通常、転送される映像データは、圧縮されているため、展開・描画処理が必要になります。
とくに、3Dデータは、ディスプレイに合わせてリアルタイムで構成していくので、処理に時間がかかります。それを描画に特化したGPUで処理することで効率的に表示できるようになります。

「GPU」は、「Graphics Processing Unit（画像処理装置）」の略で、コンピュータゲームなどのリアルタイム画像処理に特化した演算装置です。

GPUは高性能パソコンにはついていますが、廉価版だと搭載していないこともあります。

Chromeでは、例えば、GoogleMAPの衛星写真やストリートビューなど、ウェブページで3Dグラフィックを表示することがあります。

「ハードウェア・アクセラレーション」が有効だと、3Dグラフィック（WebGL）の描画は GPUで処理されます。

一方、GPUなしの場合は、Chromeの内部の SwiftShader というプログラム上で描画されます。この処理速度は、GPUに比べると遅くなってしまうのです。

もし、3DCGを高速で表示するためのGPUがあれば、使わないのはもったいないよね。

デメリットは、GPUの処理のためにメモリ使用量が大きくなることです。
また、マルチディスプレイを利用していたり、そもそも GPU が搭載されていないパソコンでは、描画がカクついたり、ノイズが走ったり、かえって動作が不安定になることがあります。

ハードウェア・アクセラレーションのポイント

搭載されているGPUを活用する
CPUの処理が軽減
メモリ使用量が増える

目次に戻る

2. ハードウェア・アクセラレーションとコピーガード（HDCP）

実は、Chromeのハードウェアアクセラレーションは、不正コピー防止と関係しています。

Chromeで動画などを表示しているときに画面録画をしようとすると、真っ暗になってできないことがあります。
これは、「HDCP（High-bandwidth Digital Content Protection system）」という、デジタルコンテンツの不正コピーを防ぐ仕組みがあるからです。

映像データを暗号化してから送信することで、途中経路で見られないようにしています。
そのため、ディスプレイの前にシステム上で画面録画しようとすると、表示されません。

「暗号・復号」の仕組み自体は、インターネットの暗号通信と似ているね。

DRMとHDCP

デジタルデータは、劣化せずにそのままコピーできるため、不正なコピーとオリジナルの区別が難しいです。そこで、オリジナルのデータ所有者の著作権などの権利を守るための仕組みがいろいろ考えられています。この不正コピーを防ぐための仕組みを総称して「DRM（Digital Rights Management：デジタル権利管理）」と呼びます。

HDCPは、そのDRMを実現する仕組みのうちの一つということになります。

目次に戻る

2-1. ソフトウェア描画だとディスプレイの前に復号される

ところが、現在のChromeでは、ハードウェアアクセラレーションのオン・オフで、HDCP の有効・無効が変わってしまいます。

通常は、HDCPで保護された動画は暗号化されて転送され、ディスプレイで復号してから映像が再生されます。ハードウェアアクセラレーションが有効の場合は、描画処理はChromeの外で実行されるので、暗号化されたままGPUやディスプレイ機器に送信されます。

デスクトップパソコンからHDMIケーブルでディスプレイに接続している場合でも、復号されるのはディスプレイ上です。

HDMIケーブルで転送されるデータも、暗号化された状態になります。

しかし、ハードウェアアクセラレーションをオフにすると、いったんChrome内で復号されてから表示されるようになります。そこで、表示された画面がディスプレイ録画できるようになってしまうのです。

The hardware acceleration allows the HDCP content to remain encrypted all the way to the display. By disabling it, the video is decrypted in software usually at a reduced resolution and/or frame rate.
（ハードウェアアクセラレーションにより、HDCP コンテンツはディスプレイに至るまで暗号化されたままになります。これを無効にすると、ビデオは通常、解像度やフレームレートを下げてソフトウェアで復号化されます。）
Why does disabling hardware acceleration in Google Chrome allow Discord users to stream sites like Netflix, TV streams, etc? – Stack Overflow

目次に戻る

3. 著作権とコピープロテクション

無断複製は例外的に認められているのですが、そのためにはいくつかの条件があります。
そのうちに「コピープロテクションを解除してコピーするものではないこと」があるからです。

私的使用目的の複製
権利制限規定の一つです。「テレビ番組を予約録画しておいて後日自分で見る」場合のように、個人的に、また家庭内など限られた範囲内で使用するなど、下記の条件を満たした場合は著作権者の許諾は必要ありません。
【条件】
1. 家庭内など限られた範囲内で、仕事以外の目的に使用すること
2. 使用する本人がコピーすること
3. 誰でも使える状態で設置してあるダビング機など（当分の間は、コンビニのコピー機など「文献複写」のみに用いるものは除く）を用いないこと
4. コピープロテクションを解除して（又は解除されていることを知りつつ）コピーするものでないこと
5. 著作権を侵害したインターネット配信と知りながら、音楽や映像をダウンロードするものでないこと
さ行-著作権解説集-マンガでわかる著作物の利用～作太郎の奮闘記-文化庁

目次に戻る