- インターネット広告は公害問題のように、誰も責任を取らない状態で不適切な広告が蔓延しています。
- 広告ネットワークを介した現在の仕組みでは、メディアによる広告品質の管理が困難な状況です。
- プライバシー保護や詐欺防止の観点から、インターネット広告に対する適切な法規制の整備が求められています。
ネット広告は品質がよくない、と諦めてはいけないのかもね。
1. インターネット広告の「公害」
現在のインターネット広告には、誇大広告や詐欺のような不適切なものが多く含まれています。
スマートフォンでの警告と紛らわしい広告や、
パソコンに表示された詐欺へ誘導する悪質な広告など、
ネット広告の問題点は明らかなはずですが、なかなか根本的な対応がなされません。
問題を避けるために利用者側に注意が必要なのは望ましい状況ではありません。
「ネット広告とはそういうものでしかたないのかな」と思いつつ、ふと「もしかすると、かつての大気汚染などの公害に似た状況にあるのかな」と思いいたりました。
そう考えると、いずれ適切な規制によって改善されていく希望も持てます。
1-1. インターネット広告と広告ネットワーク
インターネットメディアでは、どのサイトでもだいたい似たような広告が表示されています。
これは多くのサイトで、広告枠を提供し、広告配信タグを設置することで配信されてくる広告を表示しているからです。
情報メディアで表示される広告は、Google広告が主流ですが、ほかにもMeta広告(Facebook, Instagram)、Amazon広告、Yahoo!広告などさまざまな「広告ネットワーク」があります。
つまり、インターネット広告を直接的に管理しているのは、「広告ネットワーク」です。
厳密には、デジタル広告の配信・流通の構造には、3つの役割があります。
- Ad Platform(広告配信プラットフォーム)
広告主とパブリッシャーを結ぶプラットフォーム - Ad Exchange(広告枠の取引市場)
入札システムを通じて広告枠の売買が行われる - Ad Network(広告ネットワーク)
複数のパブリッシャーの広告枠をまとめて販売
例えば、Google AdSenseは、広告ネットワーク。
Google Adsは、広告配信プラットフォームです。
Google AdSenseは、Google Adsの広告を中心に配信しますが、ほかの配信プラットフォームからの広告も掲載されます。
2. メディアによる広告品質管理の難しさ
インターネット広告の特徴の一つに、メディアと広告主との間が「遠い」ことがあります。
例えば、新聞や雑誌の場合、詐欺的な広告を掲載すると、広告主だけでなく出版社の信用も問われます。
そこで、印刷や折込の前に内容のチェックが行われ、不適切なものを公開前に排除します。
ところが、インターネット広告ではそのようなチェックがあまり機能していないように感じます。
これは、広告ネットワークに場所を提供すると、送られてくる広告を基本的にそのまま表示するためです。
もちろん、不適切な広告をブロックする仕組みはあります。
しかし、広告の絶対数が多すぎるため、すべてを確認することは現実的に困難です。
インターネット広告は、デジタルデータなのでかんたんに広告が出したり差し替えたりできます。
これは、広告主にとっては便利ですが、チェックが追いつかないまま「垂れ流し」の状態になる原因にもなっているわけです。
また、悪意のある広告主は複数のアカウントを切替えて同様の広告を何度でも出せるため、なかなかブロックが追いつかないです。
2-1. 広告ネットワークの「懐事情」
短期間で大量に入れ替わる広告をメディア側からは管理できないので、広告ネットワークによる審査が求められます。
しかし、広告ネットワークは、主要な収益源が広告主からの広告収入です。
そのため、広告の厳格な審査には「及び腰」な側面があります。
例えば、YouTubeのコンテンツ規制を考えると、AI技術(自動プログラム)による広告審査も可能なはずです。
しかし、それによって小規模な広告主が離れてしまうと、広告ネットワークにとっては「不利益」になってしまうのです。
2-2. 広告ネットワークは「影の存在」
また、広告ネットワークは、これらのメディアの背後にあります。
よく見れば、悪質な広告がどの広告ネットワークによるものか見分けることもできますが、通常は直接的な批判を受けにくいです。
不適切な広告が掲載された場合の責任の所在が明確でなくなります。
つまり、インターネット上という共有空間で発生する害であるため、誰も積極的に責任を取ろうとしていないように見受けられるのです。
3. インターネット広告と法規制
インターネット技術は、もともとあまり規制を受けない「自由」なものとして発展してきました。
しかし、社会問題が大きくなるたびにさまざまな規制が設けられてきました(オンラインショップの所在地などの情報公開義務、誹謗中傷への規制など)。
近年 インターネット広告に関しては、プライバシー情報の過度な収集やステルスマーケティングなどへの法規制が進んでいます12。
また、2024年は SNS上での著名人を偽装した詐欺広告が話題になり、プラットフォームへの批判も高まりました3。
今後は、広告内容が適切なのか、特に犯罪につながるような表示については、表示させた側の責任も大きくなっていくと考えられます。
過度な検閲や情報統制は困ってしまいますが、かといって野放しにするわけにもいかない問題です。
どの程度の規制が必要なのか、社会全体で共通理解を深めていく必要があるのでしょう。
インターネット上の情報は、このような社会とのインタラクションによって変容していくのでしょう。
健全な広告が表示されるようになるといいです。
(補足)
- 6月施行の「改正電気通信事業法」、新たな「クッキー規制」とは–IIJが解説 – ZDNET Japan(2023-06-01)
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