- 「eSIM」は、物理的なSIMカードの代わりとなる、デジタル版のSIMです。
- スマートフォンの内蔵チップに直接 通信事業者の情報を書き込むため、物理的なICカードの挿入が不要になります。
- スマートフォンにセキュリティ専用チップが内蔵されるようになって、利用できるようになりました。
「embedded SIM(埋込み型のSIM)」の略です。
1. オンラインで回線契約が完了する
主なメリットは、オンラインで契約や切り替えまですぐにできることです。
ただし、反面、初期設定時にはインターネット接続が必要な点には注意が必要です。
通常は家庭内のWi-Fiなどに接続した状態で、通信事業者の管理ページやアプリなどにアクセスし、「プロファイル」をダウンロードして有効化します。
1-1. 「プロファイル」とは?
eSIMの「プロファイル」は、通信事業者のウェブサイトなどから、暗号化された形式でダウンロードし、デバイス内の安全な記憶領域に保存します。
eSIMのプロファイルには、SIMカード同様に電話番号、通信事業者情報、認証情報などが含まれます。
- ICCID(ICカードの識別番号)
- IMSI(加入者識別番号)
- 電話番号
- 通信事業者の設定情報
- セキュリティ認証情報
- APN設定
1-2. マルチプロファイルとサブ回線
eSIMでは、物理的なカードを挿入しないので、複数のプロファイルを保存することもできます。
つまり、かんたんにいくつかの回線を併用・切り替えできます。
例えば、国内用と海外用の回線を使い分けたり、データ通信用と音声通話用の使い分けたりすることができます。
2. 物理的なICカードから内蔵へ
どうして、今頃のタイミングでわざわざICカードがいらなくなったの?
ICカードのSIMは、携帯電話の初期から利用されました。
もともと、ICカードは、クレジットカードや交通系ICカードなど、重要な個人情報や金銭的価値を扱うカードにも利用されてきました。
これは、ICカードには記録したデータの不正コピーや改ざんを防ぐ設計になっているからです。
- 物理的には、チップを特殊な樹脂で覆い分解を困難にしたり、回路を多層化したりすることで解析されないようにします。
- 内部のデータも暗号化され、異常な電圧などを検知すると動作を停止します。
これを「耐タンパー性(Tamper Resistance)」といいます。
2-1. スマートフォンの安全な記憶領域
物理的なSIMカードとしてのICチップが不要になったのは、このような不正コピーを防ぐ専用チップ(セキュアエレメント)がスマートフォンに内蔵されるようになったからです。
「セキュアエレメント(SE, Secure Element)」は、暗号化された重要データを安全に保存・処理する専用のセキュリティチップのことです。
物理的な耐タンパー性と論理的なセキュリティ機能を備え、具体的な実装では、TPMやHSMなどがあります1。
セキュアエレメントは、スマートフォンにおける重要な情報やプロセスを保護する「金庫」のような役割を果たし、セキュリティが重要なサービスの基盤となっています。
確かに、モバイルICOCAとか、スマートフォンをICカード代わりにできるようになっているね。
SIMカード代わりもできるのかぁ。
また、データ転送の安全性が向上したのも一因です。
暗号化通信やデジタル署名技術の信頼性が向上して、リモートでも安全な認証ができるようになったからです。
ただし、2024年現在は過渡期で、物理SIMとeSIMの両システムが併存しています。
2-2. eSIMは移せない
ただし、eSIMの注意点として機種変更時に再発行が必要なことがあります。
物理的なSIMカードなら、使っていたものを新しいスマートフォンに差し替えれば機種変更が完了します。再発行が必要なのは、SIMカードの大きさが変わるときだけでした。
一方、eSIMはスマホ一体型。SIMを物理的に交換することはできません。機種変更時に再発行が必要で、場合によっては発行手数料なども必要です。
3. ウェアラブルデバイスでの活用
どうして、わざわざSIMカードをなくす必要があるの?
スマートフォンだけでなく、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスが登場してきたことも要因です。
これらのデバイスを直接インターネットに接続しようと思うと、SIMスロットもなくしたいわけです。