- 「+メッセージ」は、携帯電話会社が提供するRCS技術を基盤とした新しいメッセージングサービスです。
- 従来のSMSの使いやすさを保ちながら、LINEのような便利な機能を取り入れています。
- 主にインターネット通信を使用しつつ必要に応じてSMSにフォールバックする柔軟性を持っています。
- ただし、「+メッセージ」独自の技術仕様が盛り込まれているため、現時点では国内の主要キャリア間・MVNOでのみ利用可能で、他のメッセージアプリや海外の通信事業者との相互接続は実現されていません。
1. +メッセージの概要
キャリアの提供する「+メッセージ」について、技術的な仕組みについて知りたい。
特に、SMSやRCS、電話回線とインターネット通信の違いについて。
従来のSMSやLINE、iMessageとの比較も。
携帯電話会社が提供する「+メッセージ」は、従来のSMS(ショートメッセージサービス)を進化させたサービスです。
このサービスは、RCS(リッチコミュニケーションサービス)という新しい技術を基盤としています。
「+メッセージ」はRCSという国際標準規格に基づいています。
RCSは従来のSMSを拡張し、より豊富な機能を提供することを目的としています
1-1. +メッセージの特徴(RCS準拠)
「RCS」は「Rich Communication Services(リッチ・コミュニケーション・サービス)」の略称です。
従来のSMSやMMSを進化させた新しい通信規格で、国際的な団体GSMAによって標準化されています。
従来のSMSでは、文字数に制限があり、70文字までしか送れませんでした。
また、写真や動画を添付することもできませんでした。
一方、+メッセージでは文字数の制限がなく、写真や動画も送ることができます。
2. 携帯電話の電話番号を使って連絡
+メッセージは、携帯電話の電話番号を使って連絡を取ります。
そのため、すでに登録している連絡先とスムーズにつながります。
LINEは独自のアカウントを使うため、別途友達登録が必要です。
2-1. ハイブリッドな通信方式
- SMSは、電話回線を利用した回線交換ネットワークを使用しており、インターネットを介さずにメッセージを送信します1。
- 一方、RCSは主にインターネット通信(データ通信)を利用しており、Wi-Fiやモバイルデータを通じてメッセージを送受信します。
ただし、「+メッセージ」では、RCSに対応していない相手には、従来のSMSでメッセージを送ることもできます(フォールバック機能)。
+メッセージでは、ユーザーは相手の端末がRCS対応かどうかを気にせずに使えます。
- これに対し、LINEは完全にインターネット通信のみを使用しています。
- 一方、iMessageのやり方が比較的近いです。
Appleが開発したサービスで、iPhoneやiPadなどのApple製デバイスでのみ利用可能です。
Android宛てに送信するときには、「メッセージ」アプリは自動的にSMSまたはMMSに変換します(フォールバック機能)。
ただし、iMessageは、RCSではなく、Apple独自のプロトコルを使用しています。
ただし、AppleもiOS18(2024年)にRCSをサポートします2。
3. RCS準拠と相互運用性の限界
+メッセージは、日本国内の主要な携帯電話会社の間で使えます。
LINEは世界中で使えますが、相手もLINEアプリをインストールしている必要があります。
しかし、+メッセージはRCSに準拠していますが、完全に標準仕様通りというわけではありません。
日本独自の技術仕様が盛り込まれています。
- NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が共同で独自の実装仕様を規定
- GSMAのUniversal Profileを参照しつつ、日本市場向けにカスタマイズ
そのため、+メッセージには以下のような制限があります。
- 国内限定:
現時点では、海外の通信事業者のユーザーとの相互接続は実現されていません。 - キャリア間の制限:
3大キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)とそのサブブランド、MVNOユーザー間でのみ利用可能です。
3-1. RCSはIMSにあるが分かれている
他の主なRCS対応メッセージアプリには、GoogleのメッセージアプリやSamsungのメッセージアプリなどがありますが、相互運用はできません。
国際標準としてのRCSは、「IMS(IP Multimedia Subsystem)」と呼ばれるプラットフォーム上のアプリの1つとして規定されています。
4Gにおける音声通話であるVoLTE(Voice over LTE)と同じように。
「+メッセージ」では、キャリア3社のRCSアプリケーションサーバ間を相互接続しています3。
しかし、例えば、楽天モバイルの「Rakuten Link」とは相互接続されていません。
一方、Appleの「iMessage」やGoogleの「メッセージ」、「Samsung Messages」などは、インターネットを経由したアプリです。
「IMS」に相当する機能をインターネット上に構築し、その上にRCSアプリを載せているイメージです。
つまり、通信事業者のIMSへの依存性はないものの、標準化された「本来のRCS」とは異なる仕組みなのです。
3-2. RCSとインターネット
RCSは、Wi-Fiだけでは通信できない?
結論から言うと、RCSはWi-Fiでも通信できます。
つまり、携帯電話回線がない環境でも、Wi-Fiに接続していればRCSを使用できます。
ただし、いくつかの注意点があります。
RCSの初期設定時には、携帯電話回線での認証が必要な場合があります。
また、Wi-Fi接続時に一部の機能が制限される可能性があります(例:SMS連携機能)
一部の携帯電話会社では、RCSのWi-Fi利用に制限を設けている場合もあります(この制限は緩和される傾向にあります)。
4. 「+メッセージ」で増えた機能
「+メッセージ」には、メッセージが相手に読まれたかどうかがわかる「既読確認」機能や、相手が今メッセージを書いているかがわかる「入力中表示」機能があります。
これらは従来のSMSにはない機能です。
LINEはさらに多くの機能を持っており、グループチャットや音声通話なども可能です。
4-1. エンドツーエンド暗号化
+メッセージは、エンドツーエンド暗号化という高度な暗号化技術を使っています。
これにより、メッセージの内容が第三者に見られる心配が少なくなります。
従来のSMSには暗号化がありませんでした。
LINEも暗号化を使っていますが、その方法は+メッセージとは異なります。
5. +メッセージのわかりにくさ
「+メッセージ」は、SMSとRCSのハイブリッドなのが、わかりにくさの原因になっています。
しかも、「RCS」は、インターネットの一般的なチャットサービスとも違いがあります。
5-1. 「アカウント」・「ユーザー識別子」
LINEやWhatsAppなどの一般的なチャットサービスは、通信インフラとは独立したサービス提供者が運営しています。
専用アプリのダウンロードと、アカウント作成が必要です。
RCSには、独立した「アカウント」は基本的にありません。
RCSは主に電話番号をユーザーの識別子として使用します。
そのままRCSの「アカウント」のような役割を果たします。
(補足)
- 制御信号と同じ「制御プレーン」を間借り – アップルがサポートする「RCS」の標準と実現のしくみとは – ケータイ Watch
- Apple、「iOS 18」でRCSをサポート – ケータイ Watch
- アップルがサポートする「RCS」の標準と実現のしくみとは – ケータイ Watch