- ざっくり言うと、Mastodonなどで実際に「サーバーお引越し」すると、ルールの不揃いによる難しさが見えてきたからです。
- Mastodonはユーザーやコミュニティの多様性と自由度を重視し、各サーバーは独自の規約や機能を設定できるため、自分の価値観に合ったコミュニティを見つけやすくなっています。
- 一方、Blueskyは分散型SNSの安定性や統一性を重視しており、新しいプロトコルであるAT Protocolを開発中で、サーバー間での機能や規約の統一を目指しています。
- この違いは、「自由か秩序か」という観点で、分散型SNSの多様性や統一性のバランスについての考え方の違いを示しています。
Mastodonなどによって、分散型SNSは実現しました。
しかし、実際にサービスを移行しようとすると、サーバーの違いが障壁になっていました。
Blueskyは、そこを改善する目的で設計されています。
多様性は大事だけど、ある程度の統一感も必要だよね。
歴史の「度量衡の統一」に近い話かも。
1. MastodonとBlueskyの重視する「価値」
MastodonとBlueskyは、分散型ソーシャルネットワークを目指していますが、その設計思想と方向性において異なるアプローチを取っています。
- Mastodonはユーザーやコミュニティの多様性と自由度を最大限に引き出す設計をしています。
- Blueskyはシステム全体の安定性と統一性を重視し、ユーザー間での一貫した体験を提供することを目指しています。
特徴 | Mastodon | Bluesky |
---|---|---|
利点 | 多様なコミュニティの形成が容易。 ユーザーが自分に合った場所を見つけやすい。 | ユーザーの移動やデータの管理が容易になる。 サービス間での統一性が高まる。 |
欠点 | サーバー間の互換性や統一性が低く、ユーザーの移動やデータ管理が難しい場合がある。 | サーバーごとの自由度や多様性が低下する可能性がある。コミュニティ形成の柔軟性に影響が出る可能性があります。 |
Web3は、全体的には自由が基調だけど、その中でも多様性と統一性のバランスについて考え方の違いが出てくるんだね。
1-1. 分散型SNSの多様性や自由度
Mastodonは、分散型SNSの多様性や自由度を重視しています。
各サーバー(インスタンス)は独自の規約や機能を設定できるため、ユーザーは自分の価値観に合ったコミュニティを見つけやすくなっています。
1-2. 分散型SNSの安定性や統一性
Blueskyは、分散型SNSの安定性や統一性を重視しています。
新しい分散型SNSプロトコルであるAT Protocolを開発中で、サーバー間での機能や規約の統一を目指しています。
2. 技術的アプローチに現れる違い
Mastodonは既存の分散型プロトコル(ActivityPub)を採用して相互運用性を確保していますが、Blueskyは新しいプロトコル(AT Protocol)を開発し、将来的には独自の道を歩むことを意図しています。
項目 | 共通点 | 両者の違い |
---|---|---|
プロトコル | ActivityPubを採用しており、他の分散型SNSと連携できる | BlueskyはAT Protocolという新しいプロトコルも開発しており、将来的にはActivityPubとの互換性をなくす可能性がある |
サーバー | 自由にサーバーを立ち上げることができる | Mastodonはサーバーごとに機能や規約が異なるが、Blueskyはサーバー間で機能や規約が統一される |
ユーザー名 | ユーザー名の後ろに所属サーバーがつく | Blueskyはユーザー名の後ろに所属サーバーがつかない |
UI | WebUIはTweetDeck風である | MastodonはWebUIがTweetDeck風であるが、BlueskyはWebUIがTwitter風である |
クライアント | Mastodon APIを使用するクライアントアプリケーションがある | BlueskyはMastodon APIを使用するクライアントアプリケーションに対応しているが、Sky Bridgeというプロキシを経由する必要がある |
2-1. ActivityPub
ActivityPubは、異なるソーシャルネットワークサービスやサーバー間でユーザーやコンテンツの情報をやり取りできるオープンで非中央集権的な分散型SNSプロトコルの一つです。
このプロトコルを採用しているサービスでは、ユーザーが自由にサーバーを選んだり、異なるプラットフォームのユーザーと交流したりできます。
具体的には、MastodonやPeerTubeなどがActivityPubを利用しており、これによりユーザーは自分のアカウントやコンテンツを別のサーバーに移動させたり、好みのコンテンツやアルゴリズムを選ぶ自由を持つことができます。
ただし、ActivityPubの設計が分散型ソーシャルネットワーキングの初期段階でのものであるため、技術的な進化やユーザーの要求の変化に完全には追いついていません。
アカウント移行が複雑で不完全
- アカウント移行の複雑さ:
ActivityPubでは、ユーザーが自分のアカウントを一つのサーバーから別のサーバーに移行するプロセスが複雑です。
フォロワーのリスト、投稿、個人設定などのデータを移行する作業が必要なのです。 - データ連携の不完全性:
アカウントを移行する際、全てのデータや関係性(例:フォローしている/されているアカウント、ブロックリスト)が新しいサーバーに完全に移行されるとは限りません。
異なるサーバー間でのデータ形式の不一致や、移行プロセスにおける技術的な制限に起因します。
プライバシーとセキュリティ
- エンドツーエンドの暗号化の不足:
ActivityPubプロトコルは、「エンドツーエンド暗号化(E2EE)」をネイティブにサポートしていません。
これは、特にプライベートメッセージに関して、中間者攻撃などに対する脆弱性を意味します。 - プライバシー設定の限定性:
ActivityPubを採用しているプラットフォーム間でのプライバシー設定の一貫性が欠ける場合があります。
ユーザーが特定の投稿を特定のグループや個人にのみ表示したい場合、すべてのサーバーでこれを実現するのが難しいことがあります。 - セキュリティポリシーの統一性の欠如:
分散型ネットワークの性質上、各サーバーは独自のセキュリティポリシーを持つため、全体としてのセキュリティ基準の統一が困難です。
これにより、一部のサーバーがセキュリティ上の脆弱点を持ち、ユーザーデータをリスクにさらす可能性があります。
サーバ間のアカウント移行は考慮されているけど、サーバ間の違いも認めているために、実際には簡単ではないんだね。
2-2. ATプロトコル
そこで出てきた新しいプロトコルが、「ATプロトコル」です。
「Authenticated Transfer Protocol」の略。
Twitter創始者のジャック・ドーシー氏が立ち上げた、Blueskyチームによって開発されています。
基本的な考え方は、従来の分散型SNSと共通ですが、
- アカウントのポータビリティ、
- ユーザーが選択できるアルゴリズム、
- 相互運用性、
- 高速性、
- 透明で検証可能なトラストの構築
が特徴になっています。
特徴 | ActivityPub | ATプロトコル |
---|---|---|
アカウントのポータビリティ | 限定的 | 強化されたアカウントのポータビリティ |
相互運用性 | ActivityPubプロトコルを採用するサービス間で可能 | ATプロトコルを採用する任意のサービス間で可能 |
プライバシーとセキュリティ | 基本的な規定のみ | 強化されたプライバシーとセキュリティ対策 |
パフォーマンス | 標準的 | 高速性を重視した構造 |
これにより、ユーザーはコンテンツやフォロワーを失うことなくプロバイダー間を移動でき、自分の好みに合わせて情報を受け取る方法を選択できます。
「Twitter(での人とのつながり)が消えてなくなるかも」という恐怖感が原動力なんだろうね。
「認証された転送」とPDS
「ATプロトコル」というネーミングは、分散型ネットワークにおける「認証された転送(Authenticated Transfer)」を指しています。
ここでの「認証された」とは、データやコンテンツの送受信が確かな身元に基づいて行われ、信頼性とセキュリティが保証されることを意味しています。
Blueskyの「ATプロトコル」では、ユーザーは自分のデータを管理するために、「PDS(Personal Data Server)」と呼ばれるサーバーに所属します。
PDSはドメインによって識別され、
ユーザーはそのドメインに対応するハンドル(ユーザー名)を持ちます。
@chiilabo.bsky.social
というハンドルは、
bsky.social
というPDSに所属する
というユーザーを表します。chiilabo
ユーザー名とドメイン名をドットでつなぐんだね。
ハンドルが「chiilabo@bsky.social」という形式ではないのは、メールアドレスと混同しないようになのかな。
ユーザーはPDSに対して、ハンドルとパスワードの組み合わせで認証を行います。
認証に成功すると、PDSはユーザーに対して、自分のデータを署名するための公開鍵と秘密鍵のペアを発行します。
ユーザーは投稿などを作成するときに、秘密鍵で署名を行います。
この署名によって、データの真正性と不変性が保証されます。
また、ユーザーは自分のデータをPDSにアップロードすることで、他のユーザーやサービスと共有することができます。
PDSはユーザーのデータをCrawling Indexerと呼ばれるサービスに同期させることで、ネットワーク全体にデータを配信します。
3. ユーザー像の微妙な違い
3-1. Mastodonに向いているユーザー
- 多様なコミュニティに参加したいユーザー:
- 自分の興味や価値観に合った小さなコミュニティを求めている人。
- 特定の趣味、政治的見解、または社会的信念を共有するグループに参加したい人。
- 高い自由度とカスタマイズ性を求めるユーザー:
- 自分のサーバーを立ち上げ、独自のルールや文化を持つコミュニティを形成したい人。
- サービスの規制や方針に縛られず、自由に発言や活動をしたい人。
3-2. Blueskyに向いているユーザー
- 統一されたユーザー体験を求めるユーザー:
- シームレスなソーシャルメディア体験を求める人。
- 異なるプラットフォーム間でのユーザーデータの移動や管理を容易にしたい人。
- シンプルで使いやすいインターフェースを好むユーザー:
- 複雑な設定やカスタマイズよりも、使いやすさや直感的なデザインを重視する人。
- 一貫した操作性や規約に基づいたコミュニケーションを好む人。