モバイルバッテリーの「mAh」は、「ミリアンペア・アワー(miliampere-hour)」の略です。
これは、バッテリーが放電できる電荷の量を表しています。
つまり、mAhの値が高いほど たくさんの電気を蓄えることができます。
1. スマートフォン何回分?
バッテリーの容量が大きいと長時間使用できます。
低いバッテリーよりも電圧が安定するので、電気機器に負荷がかかりにくくなります。
ただし、mAhが高いバッテリーは、価格が高くなり、重たくなる傾向があります。
モバイルバッテリーなら、自分のスマートフォンの内蔵バッテリーと比較することで「だいたい何回分」なのかわかります。
ただし、モバイルバッテリーからスマートフォンに充電し直すときに、ある程度 エネルギーがロスしてしまいます。だいたい、7割ぐらいに目減りすると言われます。
2. モバイルバッテリーはどうやって電力を蓄えるの?
スマホのバッテリーやモバイルバッテリーは、リチウムイオンバッテリーを採用しています。
通常の電池は、2種類の金属片の「イオン化傾向」の違いで電気が流れます。
酸化・還元反応の結果として、化学変化した物質が電解質内で生まれます。
一方、リチウムイオンバッテリーは、リチウムイオンの吸蔵・離脱(インターカレーション)反応によって充電・放電をします。
リチウムイオン電池は、リチウムイオンが正極と負極の間で往復するだけです。
電解質は電池反応には関与せず、電極材料が溶け出して中間生成物を作るようなこともありません1。
これは、電極にリチウムイオンをそのまま吸蔵・離脱できる素材を使うことで実現しています。
ざっくり仕組みのイメージを言えば、
- バッテリー内部の液体(電解質)には、リチウムイオンが溶けています。
両方の電極の間には接触しないように絶縁体(セパレータ)がありますが、リチウムイオンは通れるような微細な穴がある素材にしています。 - バッテリーを電源につなぐとリチウムイオンは片方に引き寄せられていきます。
これにより電源のマイナス極側にリチウムイオンが集まります。 - バッテリーを電源から外すと回路がつながっていないので、電子は帰れません。電子と陽イオンはそのままの状態で待っています。
- 反対に、バッテリーを電子回路につなぐと、電子は回路を通って反対側に戻り、偏ったリチウムイオンも元に戻ります。
このときに蓄えられたエネルギーが放出されます。
つまり、mAh というバッテリー容量は、どれぐらいリチウムイオンを偏らせることができるのか、ということを示しています。
化学的なしくみですが、やっていることは「バネ」や「ゼンマイ」と同じです。
エネルギーを別の形で蓄えているんですね。
2-1. 1mAh は どれぐらいの量なの?
1 mAh ってどれぐらいの量なの?
あまり意味がありませんが、
単位換算すると 1mAh は
電子 2250京個分 になります。
1mAh = 0.001[C] * 3600 [秒]
= 3.6 C
= 2.25 * 10^19 個
= 2250京個
1mA は「電流」の単位です。
1秒間に 0.001C(クーロン)の電荷が流れるペースを示しています。
1mAh なら、これが 1時間(3,600秒)流れ続けることになります。
1Cの電荷というのは、電子 6.24×10^18個分 に相当します
2。
ここから、移動したリチウムイオンの質量を計算してみます。
1mAh のリチウムの陽イオンが 2.25 × 10^19 個 ということは、
アボガドロ定数(6.02×10^23)で割ると、3.74 × 10^-5 モル です。
リチウムの原子量は 6.94 u なので、その質量は 2.60 × 10^-4 g です。
3000mAh のバッテリーなら、
質量でみると 0.780 g 分のリチウムイオンが移動したことになるはずです3。
内蔵バッテリーの重量が 40g ほど4なので、ほとんど誤差のような気もします。
それぐらいのイオンの移動でもスマホが充電できるんですね。
3. 電力量とバッテリーの電位差
ただし、mAhでは本当の意味で どれぐらいエネルギーがたまっているのかを測ることはできません。
これは、電気機器の計算処理や発光などで消費されるのは「電力」だからです。
慣れないとややこしいですが、「電力」は 電流だけでなく電位差(電圧)との掛け算で決まっています。
電力(W) = 電流(A) × 電位差(V)
スマホのバッテリーは「mAh」で表記されるものも多いですが、
電気自動車のバッテリーなどでは「Wh(ワット・アワー)」の方が よく用いられます。
家庭の電気料金の請求とかでも kWh(キロワット・アワー)で計算されますね。
画面を表示しているときのスマートフォンの消費電力を計測してみると、約 1.7 W ほどでした5。
つまり、1.7 Wh の電力量で 1.7Wの電力を1時間分 提供できます。
モバイルバッテリーの場合、電圧(電位差)は 3.7V の規格になっています6。
計算すると 3000mAh は 11.1 Wh になります。
つまり、3000mAh のバッテリーなら 約 6.5 時間分。
体感と近いことがわかります。
3000mAh * 3.7 V / 1000 = 11.1 Wh
11.1 Wh ÷ 1.7 Wh ≒ 6.5 h
こちらもどうぞ。
(補足)
- 充電・放電ともにLiイオンが移動して、層状の活物質に吸蔵・離脱する(インターカレーション型電極)。電解質は電池反応に関与しないので少量ですみ、軽量化が図れる。- リチウムイオン電池とバッテリ技術|TDKのコアテクノロジー|TDK Techno Magazine
- ちなみに、1回の落雷が 約 0.2C から 20C と言われます – 雷 技術および最新情報 – J-Stage
- 本当に計算が合っているのか自信ないです。後日、要検証。
- Moto G4用 スマートフォン交換用互換バッテリー GA40 3000mAh 重量 43g – 【海外【海外MOTOROLA Moto G4 Plus Moto G4 用 スマートフォン交換用互換バッテリー GA40 バッテリー・充電器 | eclipstek.com
- ちなみに、30インチのテレビで消費電力は 50W ほど
- モバイルバッテリー内に使用しているリチウムイオン電池の種類によって、電圧は3.7Vと7.4Vとがあります。エレコムでは容量は3.7V換算で統一 – 【モバイルバッテリー】mAhの数字が大きいほうが充電できる量は多いので…