URLって単純なようで、意外と奥が深いんだね。
1. ホモグラフ攻撃とは?
ニュース番組でのネット・セキュリティについての解説で誤りが含まれていた、と話題になっていました。
URLの理解が深まる きっかけになるので、取り上げたいと思います。
下のスライドの解説に、「誤り」があるそうです。
「ホモグラフ攻撃」の解説自体は合っています。
実態にそぐわないのは「例」の方です。
本物のサイトと似た別の文字に置き換えたURLを使い
偽サイトに誘導するフィッシング手法
「ホモグラフ(homograph)」とは、もともと「同形異義語」。
「綴りは同じであるが、意味の違う単語」という意味です。
2. ホモグラフ攻撃の事例
迷惑メール・迷惑メッセージには、紛らわしいURLが書かれていることがよくあります。
例えば、「amazon.com
」を「amrazoin.com
」などとするのが典型的な「ホモグラフ攻撃」です。
あるいは、「amazon.co.jp.wookman.top
」のように、偽サイトのサブドメインにしているケースもありました。
先頭部分だけを読むと、本物と勘違いしてしまいやすいです。
3. 「トップレベルドメイン」の偽物は作りにくい(コスト)
元の「例」では別の文字の置き換え方に「誤り」があります。
「BAISOKU.cοm」という部分です。
「.com」の「o」の部分を似た別の文字「ο」(ギリシャ文字のオミクロン)に改変しています。
確かに「ホモグラフ攻撃」ではあります。
しかし、「.com」のような「トップレベルドメイン(TDL)」は、簡単には偽物を取得できません。
通常 偽サイトはその手前の部分が改変されるはずだからです。
4. ギリシャ文字の「ο(オミクロン)」とPunycode変換
仮に、「.cοm」(オミクロン)を含むドメインを取得していたらどうなるのでしょうか?
最近は ASCII文字以外のドメインを作成すること自体は可能です。
現実的にはありえませんが、仮にトップレベルドメインが偽装されていたとします。
すると、ギリシャ文字はマルチバイト文字なので、Punycode変換という置き換えが発生します。
例えば、「chiilabo.cοm
」だと「chiilabo.xn--cm-jbc
」となります。
国際化ドメイン | 変換後 |
---|---|
chiilabo.cοm | chiilabo.xn--cm-jbc |
アドレスバーを見れば違いには気づくことはできますが、一見して紛らわしいのは確かです。
5. 「数学用英数字」の置き換え
ほかの「別の文字」の例として、「数学用英数字1」と方法もあります。
英数字の異体字です。
しかし、こちらはフィッシング攻撃での目的は「ホモグラフ攻撃」とはちょっと違います。
というのも、偽メッセージのURLに「数学用英数字」を含めても、似た別のURLに誘導するということはできないからです。
「数学用英数字」は、メッセージアプリの処理の中で、通常の英数字に置き換わってアクセスされます。
詐欺メッセージが数学用英数字を含んだリンクにするのは、迷惑SMSフィルターのブラックリストから逃れるのが目的だと考えられます。
さっきの例だと、結局 「.com」になっちゃうんだね。