ドコモの「格安プランahamo」。ドコモショップでは契約できない料金プランです。
そんな中、ドコモショップでの気になる勧誘方法がニュースになっています。
キーワードは「アハモフック」。
料金プランの契約を例に、「リテラシー(自分で情報を選び取る能力)」について考えていきましょう。
店頭で説明を受ける前に、自分に必要なプランや予算を下調べしておかないと、思わぬ結果になることがありますよね……
知ることは大事な護身術!
アハモフックとは? いつの間にかギガホの契約に
まずは、おさらいですが、だいたいスマホの料金プランは、
(1)小容量のプラン
(2)大容量のプラン
(3)シニア限定の割安プラン
(4)オンライン限定の格安プラン
に分かれていると考えるとシンプルです。
東洋経済オンラインの記事(2021年3月26日)によると、ahamoに関心を持つ問合せに対して、ドコモへの料金プランへの契約を勧誘する「ドコモの内部資料」が暴露されています。
携帯電話大手のNTTドコモは3月26日、格安の新プラン「ahamo(アハモ)」の提供を開始する。
そんな中、昨年12月から同社がドコモショップを営む携帯販売代理店に対し、アハモを前面に押し出して客を勧誘したうえで、高額な大容量プラン「ギガホ」などに誘導するように指示をしていたことが、東洋経済の取材でわかった。ドコモは事実と異なる説明をするように代理店に奨励しており、景品表示法違反(おとり広告や優良誤認、有利誤認)のおそれがある。
(中略)
ドコモはこうした手法を「アハモフック」(フック=「ひっかけるための道具」の意味)と社内資料で称している。
ドコモ、「アハモでギガホ勧誘」景表法違反か | 通信 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
ahamoは「(4)オンライン限定」、ギガホは「(2)大容量」に相当します。
「フック」は、「魚釣りの釣り針」のことで、(4)のつもりが、(2)になってしまったのです。
記者さんの体験談が、あまりに生々しいので、もう少し引用します。
記者も今年2~3月、首都圏の複数の出張販売を回ってアハモフックを実際に確かめた。出店に張り出されたアハモのポスターを眺めながら周辺を歩くと、「docomo」のロゴが入った赤いジャンパーを着たスタッフからたちまち「アハモに興味はありますか」と声を掛けられた。その場でほかの通信会社と契約していることを話すと、スタッフは「アハモにすればお安くなるので、少しお話を聞いていきませんか」と笑みを浮かべてパイプ椅子を勧めてきた。
着席後、店員はアハモの説明をすると立て続けに、「お客様にはアハモが大変お勧めですが、まだ受付を開始していません。ですが、アハモにするなら今からドコモに乗り換えておいたほうがラクです」と畳みかけてきた。そして、アハモの話を聞くはずだったのが、いつの間にか、大容量プラン「ギガホ」を契約する話にすり替わっていた。
ドコモ、「アハモでギガホ勧誘」景表法違反か | 通信 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
えー、こんなのありなの?
↑ ドコモに限らず auでも同様の事例があります。
ギガホ? ギガライト?
ドコモの「ギガホ」は、データ通信をたくさん利用する人のための料金プランです。節約したい人は「ギガライト」です。
確かに ahamoは、「大容量で格安」という料金プランなので、「大容量」という部分は重なりますが、価格のインパクトに興味を持った人からすると、ズレてしまいます。
ギガホは、いろんな割引ありで、ざっと「基本料金4,980円税抜)」のプランで、
ahamoは「月額2,980円(税抜)」を宣伝しているので、だいぶ隔たりがあるからです。
勧誘が過熱する背景には、オンライン時代の携帯ショップ(代理店)の生き残り競争があります。
ahamoのインパクトで、ドコモが取り上げられていますが、程度差はあれ、各社とも同じ構造になっています。
ahamoフックは悪くない? 「後で楽に乗り換えられる」とは
一方で、「オプションを外したギガライトなら、ahamoに乗り換える前に、docomoに乗り換えた方が、手続きがラクになる」という考え方もあります。
確かに、代理店に手伝ってもらって、いったんドコモのギガプランに変更して、後日 自分でahamoにプラン変更すると、いくつか省ける手続きがあります。
・スマートフォンの購入・初期設定
・本人確認、
・支払い方法の登録 などです。
特に、インターネットにあまり詳しくない人にとっては、オンラインで自分で身分証の写真をアップロードしたり、クレジットカードの登録をするのは大変です。店頭で手伝ってもらう方が楽かもしれません。
他社からどうしても「docomoのahamoに」乗り換えたい場合には、一つの選択肢といえそうです。
「レ点商法」は解約し忘れに注意
でも、ahamoへの切替は、忘れずに自分でしないとね。
「有料プランに入ったらお得で、後日 すぐに解約していい」という販売手法を、「レ点商法」といいます。とりあえず、チェック(レ点)をつけさせる、という契約の仕方です。
しかし、契約した人が解約を忘れたり、できなかったりすると、割高な支払い続けてしまうことになり、消費者問題になっています。
「後で乗り換えを勧める」勧誘方法は、「レ点商法」に近い構造になっています。
docomoの「解約金留保」の仕組み
また、2度乗り換える方法には、契約するときの注意点も2倍あります。不要なオプションを追加してしまったり、2年契約の縛りが発生すると、思わぬ出費につながるからです。
あれ? ahamoでは解約金はないって言ってたよ。
一つ注意したいのが「解約金留保」という仕組みです。
もし、ギガライトで2年定期契約の割引をしても、ahamoに乗り換えるときには、2年契約の解約金は必要ありません。しかし、残りの契約期間は引き継がれるので、もし ahamoから他社に乗り換えようとすると、解約金が発生してしまいます。
乗り換え | 解約金 | 2年定期契約の期間 |
ギガライト→ahamo | 不要 | そのまま引き継ぐ |
ahamo→他社 | 必要な場合がある |
新料金プラン「ahamo」が菅政権から高い評価を得ているNTTドコモですが、大手3社で唯一「解約金留保」という仕組みを維持し、電気通信事業法改正前の料金プランから現在の料金プランに変更した時、“2年縛り”を一定期間温存しています。
大手3社でNTTドコモだけが固執する「解約金留保」とは 2年縛りにも影響 | マイナビニュース(2021/01/07)
逆にいうと、2年間 docomoに契約を拘束できた、ということが代理店への報酬につながるのです。
大雑把に計算すると、約3,000円/月なので、2年間でおよそ72,000円の売上が確定できることになります。
もちろん、「ahamo を2年以上 使っていくつもり」という場合にはデメリットではありません。しかし、今後さらに安い料金プランが出てきたときに変更できるかどうかは、注意が必要なポイントですね。
結局、「2度乗り換える」方法は、一見ラクなようで、かえって複雑になってしまいます。契約上の注意点が増えて、自分で管理できなくなると、どうしてもショップの「言いなり」になってしまいます。
わたしは、わからないまま契約するよりは、理解して契約するのが、結局 遠回りなようで、近道だと思います。
なんでも安くなる理由を考える
新年度を前に、契約プランを見直す人も多く、教室でもどのように説明を聞いたらよいのか相談されます。
利用者としてまず知っておくべきことは、「なんでも安いものには理由がある」というシンプルなことです。
「安くなる理由」に納得した上で契約することが大事です。
ahamoに限らず大手キャリアの「格安プラン」は、「ショップサポートがなくなる」ということが一番大きなポイントです。
自分でオンラインの契約手続きをします。だから、安くできるんです。
オンライン手続きがメインになると、携帯ショップには大打撃なんだね。
これまでも、MVNOという格安SIMサービスがありました。しかし、「大手に比べて なんとなく不安」と尻込みしていた利用者にとっては、キャリアの格安プランは、意味があります。
携帯ショップの2つの機能(勧誘営業とトラブルサポート)
しかし、ショップサポートがなくなるので、困ったときに携帯ショップに駆け込めば良い、ということにはなりません。
逆にいうと、「スマホにトラブルがあったときに、オンラインで解決できるか」ということが大事です。例えば、自宅にインターネット回線があって、パソコンやタブレットなどで自分で調べたり問合せできる場合は、オススメです。もちろん、そういう家庭では、これまでスマホ代のほかに回線代を払っていますので、通信料全体としては必ずしも安いとは言えません。
しかし、スマホ一台分の契約しかなくて、「スマホが不調になるとネットにもつながらずお手上げになる」という場合は、もしものときのために、ショップサポートのある料金プランにすることも、理にかなっています。
大事なことは、何を省いて、何を残すのか、という視点ですよね。
でも、ショップが紛らわしい宣伝をするなら、困ったときに相談できるかなぁ……
事業者が必要とされるサービスを提供し、利用者が必要とするサービスの対価を払う、というのが、本来の形ですね。
携帯ショップによる有償サポートの流れ(追記:2021年5月1日)
ドコモショップを有償サポート拠点に転換していく流れが出てきています。
新たな事業モデルで、どの程度店舗を維持できるのか、興味深いです。
お買い得よりも自分に必要なのか
そして、もう一つ大事なことは、「お買い得よりも自分に必要なのか」ということです。
ネット動画が普及して、「月のモバイルデータ量が足りない」という方も増えてきています。自宅にインターネット回線やWi-Fi環境がなければ、大容量のデータ通信の恩恵は大きいです。
逆に、「メールや調べ物をするだけ」という使い方なら、すぐには必要ないものです。
料金プランは、「ややこしくて人にお任せ」としたくなりますが、今 携帯ショップは激動期です。
「契約するのは自分」ということを忘れずに、納得できる契約ができるとよいですね。
ちなみに、私がオススメする選び方は、こちら。
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